研究課題
視神経脊髄炎特異的自己抗体(NMO-IgG)によるアストロサイト傷害は、従来からの補体依存性傷害に加え、補体非依存性傷害の存在が病理学的検討から推測される。特に、アストロサイトの軸索伸長や細胞接着に関わるタンパクや、仮足を形成するタンパクがアクアポリン4(AQP4(と共に内在化し傷害される機序が推定され、その詳細な分子機序を明らかにすることが本研究の目的である。また、近年その臨床像が明らかとなってきたNMO-IgG陰性視神経脊髄炎についても同様のアストロサイト傷害が引き起こされるか、そのメカニズムを明らかにすることも目的としている。NMO-IgG陽性NMO患者5名より抽出したIgG(NMO-IgG)を用い、ヒトアストロサイト一次培養細胞に与える影響をモデルを用いて観察した。NMO-IgGにより膜上AQP4のクラスター形成に引き続きエンドサイトーシスが確認され、膜状仮足や糸状仮足が剥がれ落ちる反応をライブイメージングで確認できた。また、NMO-IgGを正常アストロサイト一次細胞に作用させるとアストロサイトの膜状仮足や糸状仮足が退縮し、一部は細胞培養液中に剥離する現象が確認された。仮足の運動や形態に関与するCRMP5やArp2/3 complexの髄液中での変化について解析中である。今後は、アストロサイト仮足を形成するCRMP5やRhoファミリーの低分子量Gタンパク(RhoA, Rac1, Cdc42など)、細胞接着に関連するconnexinやpannexinなどについて免疫組織化学染色、ウェスタンブロッティングやRT-PCRによる経時的変化の検討を行う。
2: おおむね順調に進展している
想像以上に臨床面・教育面での負担があり、計画以上の進行を得ることはできなかったが、概ね順調といえる進行状況である。
視神経脊髄炎の診断や疾患活動性、予後に関与すると思われる新たなバイオマーカーの確立に向け研究を進める。具体的には、アストロサイト足突起での軸索生長因子や細胞接着因子、仮足に特異的なCRMP5やRhoファミリータンパク、仮足の運動に必要なアクチンやArp2/3 complex、Tip complexなどの仮足骨格タンパクについて、病理組織を用いた免疫組織化学染色による検討を行う。また、AQP4抗体陰性視神経脊髄炎患者より得られた髄液を用いた検討を行い、AQP4抗体やMOG抗体以外の新たな自己抗体についても検討を進める。
物品費の請求が年度内に間に合わなかったため。
実験に使用する抗体を購入予定である。
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