研究課題/領域番号 |
26860660
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長島 優 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (20635586)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シヌクレイン / 振動スペクトル / ラマン分光 |
研究実績の概要 |
1). 非線形ラマン分光顕微鏡の開発:自作のチタンサファイアレーザーのレーザー共振器の密閉および空気ゆらぎの排除を行い、光源となるフェムト秒レーザーのモード同期の時間安定性の向上を行った。これにより、画像取得に必要な時間オーダーで、光源を安定して動作させることができるようになった。自動ステージを用いたラスタースキャンにより画像取得を行う顕微鏡を新たに製作し、完成した光源レーザーおよびCARS分光光学系と組み合わせて、非線形ラマン分光顕微鏡を完成させた。現在、空間分解能の評価を行っている。 2). CARS画像と同じ視野で透過光画像の取得を行い、試料上での観察位置の確認を行うための光学系を作成した。これを昨年度までに作成した画像処理プログラムと組み合わせて、非線形ラマン分光画像測定後に、同じ切片を従来法で染色し、従来法とラマン分光画像を比較して観察のできる系を立ち上げた。さらに、二片の組織連続切片を用いて、片方に従来法による染色を施し、もう片方で非線形ラマン分光画像測定を行うことで、従来法とラマン分光画像の比較を行えることも確認した。 3). 1).で完成した非線形ラマン分光顕微鏡を用いて、試験的に培養細胞(HeLa細胞, HEK293T細胞)のラマン分光画像を測定した。また、ラマン分光画像の取得・解析を行うためのソフトウェアを開発し、個々の振動モードを選んで、振動モードごとの空間分布のマッピング・イメージングを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究ではαシヌクレイン凝集体の観察に必要な非線形ラマン分光顕微鏡を新規に開発している。計画一年目に試料中の一点でラマンスペクトルを測定するCARS分光光学系は完成していたが、光源レーザーのマシンタイムの制限から、本研究を効率的に進めるために新たに光源レーザーを製作することになった。また自作したレーザーの発振の安定性を実現する研究開発に想定以上の時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
計画より遅れたが、画像取得の行える非線形ラマン分光顕微鏡が完成した。本年度は、この顕微鏡を用いて、実際にαシヌクレイン凝集体の観察を行う。ヒト脳組織中・培養細胞標本中でのαシヌクレイン凝集体の振動スペクトル測定、およびイメージングを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、顕微鏡の光源に用いるために作成したチタンサファイアレーザーの、調整と安定性向上に想定以上の時間を費やした。今年度具体的に行った作業は、レーザーを構成する光学部品位置の調整・運転方式の試行錯誤であり、昨年度までに購入した物品を用いて実験を行うことができたため、今年度の支出は行う必要がなかった。しかし、全体の研究計画から見ると、非線形ラマン分光顕微鏡は完成したが、αシヌクレイン凝集体を実際に観察する仕事が終わっておらず、引き続き研究継続が必要である。以上の理由により、次年度へ繰り越し手続きを行った。
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次年度使用額の使用計画 |
αシヌクレイン凝集体を培養細胞で作成するための分子生物学実験、モデルマウス脳およびヒト剖検脳組織中のαシヌクレイン凝集体を観察するための病理標本作成等のために、必要な消耗品を購入する予定である。
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