研究課題
「橋本脳症」は慢性甲状腺炎(橋本病)に伴う自己免疫性脳症である.この疾患に一部、認知症や情動障害を主とする辺縁系脳炎の臨床像を呈するものがあり(以下、辺縁系脳炎型橋本脳症)、治療可能な認知症の鑑別疾患のひとつである.また、我々の研究グループでは橋本脳症に対する血清中特異的自己抗体(以下、抗NAE抗体)を同定し、臨床上、診断マーカーとして有用であり、国内外で注目され、測定依頼を多数引き受けている.本研究の目的は、辺縁系脳炎型橋本脳症の疾患概念の確立と病態研究である.<辺縁系脳炎型橋本脳症患者のエントリー> 昨年度エントリーした抗NAE抗体陽性の辺縁系脳炎型橋本脳症患者19名を引き続き対象患者とした.今年度、辺縁系脳炎の原因となる血清中の他の自己抗体の有無を対象患者において追加確認した.方法は、ヒト由来培養細胞(HEK293)に抗NMDAR抗体、抗AMPA抗体、抗GABAB抗体、抗LGI1抗体、抗Caspr抗体をtransfectしたBIOCHIPsを用いたcell-based assayで、間接免疫蛍光法にて検討した.結果は抗VGKC complex抗体陽性例5例のうち4例で抗LGI1抗体が陽性であった.その他の症例はいずれの抗体も陰性であり、辺縁系脳炎の病態に抗NAE抗体が深く関与していると考えられた.<辺縁系脳炎型橋本脳症の病態研究> 自己抗体の海馬への免疫反応性と局在の検討:抗NAE抗体陽性の辺縁系脳炎型橋本脳症患者血清をラット海馬スライスに反応させた.昨年度、患者血清は海馬のニューロンに免疫反応を示すことが判明した.本年度は、海馬でも分子層に存在するニューロンに反応し、特に細胞質に免疫反応を示すことが明らかとなった.以上の結果をもとに、辺縁系脳炎型橋本脳症の疾患概念や病態をまとめ、論文投稿中である.
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Brain and Nerve
巻: 4 ページ: 399-406
10.11477/mf.1416200412
日本臨床
巻: 別冊免疫症候群I ページ: 98-101