研究実績の概要 |
平成27年度、Cerebral amyloid angiopathy related inflammation (CAA-ri)患者6名、Alzheimer’s disease (AD)患者50名、amnestic MCI患者21名、non-Alzheimer’s dementia患者9名の、髄液および血清抗Amyloid β(Aβ)抗体価を、当科で確立したELISA法で測定した。また髄液Aβ40, Aβ42, pTau181の値、血液脳関門の透過性の指標であるalbumin quotient (QAlb)、IgG indexを測定し患者群間で比較した。結果、髄液抗Aβ抗体価はその他疾患群と比較し、CAA-ri群で有意に高値だった。血清抗Aβ抗体価は、AD群と比較しCAA-ri群で有意に高値だった。CAA-ri群では、髄液Aβ40値がAD群と比較し、髄液pTau値がAD群およびnon-AD群と比較し有意に低値だった。髄液Aβ42値は、CAA-ri群、AD群で、non-AD群と比較し有意に低値だった。さらにCAA-ri群では、QAlb値がAD群およびMCI群と比較し高値で、IgG INDEX値はその他疾患群と比較し有意に高値であった。以上の結果から、特に髄液Aβ抗体価の上昇と髄液Aβ40およびAβ42値の低下が、診断にCAA-riの新たな診断バイオマーカーと成りうる可能性が示唆された。また、CAA-ri患者では、血清抗Aβ抗体価がQAlb値と有意な相関を示した(R = .943, P < .005)。CAA-riにおいて抗Aβ抗体価の上昇を伴う炎症病態が血液脳関門の破綻と関連する可能性が示唆された。さらにdot blot法を用いた検討では、CAA-ri患者における髄液抗Aβ抗体のサブクラスは主に、IgG2とIgG3で、AβをN末端部・中間部・C末端部の3つに分けたエピトープ解析では、主な線状エピトープは中間部とN末端部に存在した。また病理学的にCAA-riと確定診断した症例で、髄液サイトカインを検討したところ、炎症性サイトカインのIL-6, 白血球遊走因子のIL-8, Th1サイトカインのINF-γの上昇を確認した。この中のIL-8はCAA-ri患者6例全例で上昇を認め、CAA-riの病態において重要な役割を担っている可能性が示唆された。
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