研究実績の概要 |
本年度、脳アミロイドアンギオパチー関連炎症(CAA-ri) 9名、アルツハイマー型認知症(AD)58名、軽度認知機能障害21名、非アルツハイマー型認知症(non-AD)17名、非認知症28名の髄液を用い、抗Amyloid β (Aβ)抗体価,Aβ40,Aβ42,pTau181の値を測定し、それぞれの患者間で比較検討した。髄液抗Aβ抗体価はその他疾患と比較し、CAA-riで有意に高値であった。またCAA-riでは、髄液Aβ42値がnon-ADおよび非認知症と比較し、pTau181値がADおよびnon-ADと比較し有意に低値であった。次にROC曲線を用い、髄液抗Aβ抗体価のCAA-riの診断マーカーとしての有用性を検討した。9.17 unitをcut off値として感度100%、特異度97.5%という結果が得られ、抗体価が同疾患の診断マーカーとして有用であることを確認した。ちなみに血清抗Aβ抗体価は、985.5unitをcut off値として感度87.5%、特異度70.8%という結果であった。次に、CAA-riと類似する画像所見を示す多発大脳微小出血 (mCMBs)と広範な大脳白質病変を伴うAD患者の中に、CAA-riの患者が含まれている可能性を想定し、CAA-ri患者およびmCMBs合併・非合併AD患者間において、抗Aβ抗体を含む髄液所見を比較検討した。mCMBs合併AD患者は全例広範な大脳白質病変を合併した。CAA-ri患者では、その他の患者と比較し有意に抗Aβ抗体価, IL-8, 髄液/血清アルブミン比, IgG indexが高値であった。一方mCMBs合併・非合併AD患者間において、これら髄液マーカーの値に有意差はみられなかった。以上よりCAA-riは、mCMBsと広範な大脳白質病変を伴うAD患者とは、異なる病態機序を有する疾患であると考えた。
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