研究課題
球脊髄性筋萎縮症(SBMA)は成人発症の運動ニューロン疾患のひとつで進行性に嚥下筋や呼吸筋、四肢の筋肉の麻痺を来す難病であり、その原因はアンドロゲン受容体遺伝子内のCAG繰り返し配列の異常延長による異常タンパク質の発現であることが分かっている。SBMAはゲノムレベルの異常による疾患にもかかわらず、成人になるまで発症しないことから、その病態にはエピゲノム変化が強く関わっている可能性があるがそのメカニズムは明らかにされていない。本研究では、SBMAの病態におけるエピジェネティクスの役割を明らかにするために、エピジェネティクスの主体であるDNAメチル化の異常についてSBMAモデルマウスやモデル細胞を用いて解析を行った。その結果、DNAメチル化阻害剤であるRG108で処理したSBMAモデル細胞は用量依存的に細胞活性が改善することが示された。またRG108をSBMAモデルマウス脳室内へ持続投与することで、SBMAモデルマウスの運動機能、生存期間が改善することも明らかになった。さらに、RG108で治療したモデルマウスとコントロールとして生食を投与したモデルマウスの脊髄組織から抽出したRNAを用いて、cDNAマイクロアレイ解析を行った結果、治療により優位に発現が上昇する16の遺伝子を同定した。同定された16の遺伝子に関してSBMAの病態における役割や各遺伝子のプロモーター領域のDNAメチル化変化の解析が必要であると考えられた。本研究でSBMAの発症メカニズムにDNAメチル化が関与している可能性が示唆されたことは、同疾患の診断バイオマーカー開発や治療法開発のために意義があると考えられる。今後同定された候補遺伝子の病態への役割を詳細に解析することで、成人発症する神経変性疾患の病態解明、治療法開発にも役立つと考えられる。
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