研究課題
前年度に引き続きiPS細胞の遺伝子修復によるisogenic control/mutant作製について、pilot studyを行った。CRISPR/Cas9によるゲノム編集のため、L444をtargetとしたが、HEK細胞でもゲノム編集率は10%弱と予想より低確率であった。その後同部位に対しては、iPS細胞を用いた場合1/200程度の効率であるとの報告がなされ、個体差・遺伝的バックグラウンドの解消の手段として、①多数例のGBA変異患者を対象とすること、②ドパミン神経への分化の程度をそろえて均一なドパミン細胞集団を解析すること、とした。①に対して、GBA遺伝子のシークエンスを引き続き行い、複数名のGBA変異患者を同定した。なかでも、c.1447_1466 delinsTG変異はPDにおけるGBA変異としては新規の変異であった。これらより計5系統以上のiPS細胞を樹立した。②に関して、ドパミン前駆細胞の細胞表面に発現するcorinに注目してsortingを行い、70-80%程度までcorin陽性細胞を濃縮することが可能であったが、corinの発現率に個体差があること、また細胞数が10%以下に減少すること、その後の成熟ドパミン細胞の段階で完全には分化がそろうわけではないことが判明した。また、分化の程度を揃えて分化ドパミン細胞の正確な比較を行う必要があるが、この点に関しても従来のcorinによるsortingは、細胞移植には有効であるが、疾患研究には不十分と考えられる。近年、細胞内の複数のmiRNA活性の違いを定量的に感知することで、分化した細胞の同定や分離の精度を90%程度まで高めることができる技術が開発されており、分化ドパミン細胞に適応することでこれらの問題を克服できる可能性がある。
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PLoS Genetics
巻: 11 ページ: e1005065
10.1371/journal.pgen.1005065