研究課題/領域番号 |
26860669
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
安部 真彰 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (80598748)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 血液神経関門 / 血液脳関門 |
研究実績の概要 |
平成26年度はヒト血液脳関門(BBB)構成内皮細胞とヒト血液神経関門(BNB)構成内皮細胞の網羅的な遺伝子解析・比較を行った.ヒト脳微小血管内皮細胞株(TY10)及びヒト末梢神経内微小血管内皮細胞株(FH-BNB)からRNAを抽出し,DNAマイクロアレイを用いて網羅的に遺伝子発現を解析した.得られた結果はt検定で比較し,p<0.05かつ4倍以上のシグナル値の差のある遺伝子を発現量に差のある遺伝子とした.Tight junction関連分子は,個々の遺伝子発現を比較した.また得られた全遺伝子を対象としてGSEA(gene set enrichment analysis)を行った.Gene setにはKEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)のデータベースを使用した.その結果,TY10ではclaudin 1,5,11,12の発現量が多く,FH-BNBではclaudin 4,6,9,16,18,19の発現量が多かった.GSEAではhedgehog signaling pathwayに含まれる遺伝子がFH-BNBで増加していた.BBBとBNBではバリアを構成するtight junction関連分子の発現が異なっていることが明らかになった.また,hedgehog familyは3種類の蛋白が知られており,sonic hedgehogはBBBに,desert hedgehogはBNBに影響することが知られている.今年度の研究ではhedgehog signaling pathwayの違いがBBBとBNBのバリア機能の違いに関与している可能性が明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度はDNAマイクロアレイを用いてヒトBBB構成内皮細胞とヒトBNB構成内皮細胞の遺伝子発現を網羅的に比較検討した.GSEAの結果,hedgehog signaling pathwayの発現量がBBBとBNBで異なることが明らかになり,同pathwayがBBBとBNBのバリア機能の違いに関わっている可能性があることが明らかになった.BBBとBNBの違いに関与する候補遺伝子がみつかり,研究は順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度はhedgehog signaling pathwayに関わる蛋白がバリア機能の維持に関係しているかどうかを明らかにすることを目標にする.まずはsonic hedgehog,desert hedgehogをBBB,BNB構成内皮細胞へ作用させバリア機能が変化するかどうかを確認する.また,smoやgliといったhedgehog signaling pathwayに関わる蛋白の阻害剤を使用して,同pathwayのうちどのようなシグナル伝達経路がバリア機能に関わっているかを明らかにする予定である.その後,視神経脊髄炎やCIDP患者血清をそれぞれのバリア構成内皮細胞へ作用させることでhedgehog signaling pathwayに関わる遺伝子の変化を検討する予定としている.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度はDNAマイクロアレイとそのデータ解析を主に行っており,予定より細胞動態や蛋白の解析が少なかったため次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
細胞培養液や細胞培養用ディッシュなどの細胞培養のための消耗品,ウエスタンブロッティングや免疫細胞化学による解析のための抗体,各種阻害剤を複数購入する.研究成果をいち早く臨床の現場にフィードバックするため,国内外での学会発表のための旅費と論文作成のための英文校正の費用を計上する.
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