研究課題
当初、認知機能訓練として用いる予定であったNeuroADが、予算の都合上購入できなかったため、マガーク課題を独自に作成し、認知機能課題として用いることとした。聴覚認知が視覚性情報から干渉を受けることによる錯聴をマガーク効果と呼び、アルツハイマー病ではマガーク効果が起こりにくいと言われている。マガーク効果に対する脳内処理機構については健常成人においてもまだ十分に解明されておらず、不明な点が多い。本研究ではマガーク効果に対する磁気刺激の効果をアルツハイマー病で評価する前に、健常成人で検討した。27人の健常成人を対象して、聴覚視覚刺激が一致しない課題(例えば音声がバ、映像がガ)と一致する課題(音声も映像もバ)をランダムに提示して、課題に対する脳活動を機能的MRIで記録した。また同様の課題を行っている最中に経頭蓋磁気刺激を口の運動野に行い、マガーク効果への影響について検討した。聴覚視覚刺激が一致しない課題の場合には、一致する課題に比べて有意にマガーク効果の出現を認めた。機能的MRIでの検討では、聴覚視覚刺激が不一致の課題の場合には、運動前野と下前頭回の活動が有意に高く、一致する課題の場合にはウェルニッケ領域を含む上側頭回に活動を認めた。ブローカ野の活動とマガーク効果の出現率とには負の相関を認め、ブローカ野の活動が高いほど、マガーク効果が認められにくいことが示唆された。聴覚視覚刺激が不一致の課題の場合にブローカ野と運動野との連関性が高まっていた。経頭蓋磁気刺激を口の運動野に行うと、不一致課題の場合にマガーク効果の出現が有意に低下した。聴覚視覚刺激が一致しない場合には、ブローカ野を含んだ前頭葉に位置する運動領域の活動性が高まり、不一致を同定して錯覚しないように修正する機構が働いていると考えられた。運動野への磁気刺激はその修正機構を促通したと考察した。今後はアルツハイマー病で検討したい。
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