研究実績の概要 |
本研究は、アルツハイマー病を中心とした認知症患者の各種症状における時間的要素の障害を解明することを目的にしている。具体的には、認知症患者における時間感覚の障害について、その認知的要因と神経基盤を検討し、各種認知症症状と時間感覚の障害の関連を探索する。そのため、時間認知課題成績と種々の神経心理学的指標との相関を分析する。また、時間認知成績と脳局所体積の相関を分析し、時間認知の神経基盤を検証する。 平成26年度は、データの採取を進めた。被験者16人に対して、半構造化インタビューを実施して主観的時間感覚と認知症症状の関連を探索し、またvisual analogue scaleを用いた半定量化を行って、次の段階として他の神経心理学的指標との相関を解析することに備えた。また、同被検者に対して、MoCAなどの神経心理学的評価を行い、脳MRIと脳血流シンチグラフィーの画像データを採取した。 最終的なデータ解析および被検者の追加については、平成27年度に予定している。ただし、先行研究の検討や、実施したインタビューの内容から考察される傾向については、学術誌に発表した(杉本あずさ, 二村明徳, 河村満.「こころの時間」の脳回路 ―神経内科臨床からの提言―. BRAIN MEDICAL 26, 19-23 (2014).)また、当研究はアルツハイマー病患者を主な対象にしているが、パーキンソン病患者を対象として類似の時間認知障害を検討している研究者とも合同で発表した(本間元康, 黒田岳志, 二村明徳, 杉本あずさ, 河村満. パーキンソン病・アルツハイマー病における時間認知障害. BRAIN and NERVE 67(3), 297-302 (2014))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では、研究内容を1.時間認知の測定、2.認知機能の測定、3.臨床的“認知症症状”の測定、4.脳構造と時間認知機能の相関に分けて予定した。そのうち、1.時間認知の測定 については、先行研究(Takahashi et al.,2012; Mohamad et al.,2013)を参照し、自験群で追試することを予定していた。しかし、パイロットスタディとして試行したところ、認知症患者および健常高齢者でも課題の理解が困難なケースがあった。また課題の遂行に30分から一時間の時間を要し、疲労を訴えられた。他の先行研究も検討したが、いずれも被験者の認知的、時間的負担が少なくなかった。一方で、1.時間認知の測定を施行する目的としては主として先行研究との一致を確認するためであった。そのため、研究計画を変更し、研究内容1.時間認知の測定に関しては自験者では施行せず、先行研究を引用して研究内容2.以下と考察することにした。以上の研究計画の見直しに伴い、本研究の進行度はやや遅れていると判断した。
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