われわれは2型糖尿病病態における膵β細胞量増加への治療法の確立を目指すため、主に高脂肪食誘導性膵β細胞増殖メカニズムの解明に関する検討を行った。その中でも特にインスリン抵抗性が生じないと想定される短期の高脂肪食負荷による膵β細胞の増殖ならびにそのメカニズムを検討した。雄8週齢野生型マウスを普通食飼育マウス群と高脂肪食負荷マウス群に群別し、7日間飼育後に膵β細胞増殖能を比較したところ、2群間でインスリン感受性に差を認めないにもかかわらず、膵β細胞におけるBrdU陽性細胞率は、普通食群に比し、高脂肪食群で有意に高値であった。また7日間飼育後の両マウスの膵島を単離し、その遺伝子発現をreal time PCR法を用いて解析したところ、単離膵島のmRNAの発現においては、普通食群に比し高脂肪食群で明らかなIRS-2の上昇を認めなかった。さらに雄8週齢野生型マウスおよびIRS-2欠損マウスを普通食飼育マウス群と高脂肪食負荷マウス群にそれぞれ群別し、30週間飼育後に膵β細胞面積を比較したところ、野生型マウスにおいては普通食群に比し高脂肪食群で著明な膵β細胞面積の増大を認めたが、IRS-2欠損マウスにおいては高脂肪食群でわずかながらも有意な膵β細胞面積の増大を認めた。以上より高脂肪食誘導性膵β細胞増殖メカニズムにおいては、以前より指摘されていたIRS-2依存性の経路に加え、IRS-2非依存性の経路が存在する可能性が示唆された。
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