研究課題/領域番号 |
26860683
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中村 昭伸 北海道大学, 大学病院, 助教 (70552420)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 膵β細胞量 |
研究実績の概要 |
われわれは2型糖尿病病態における膵β細胞量増加への治療法の確立を目指すため、主に①高脂肪食誘導性膵β細胞増殖メカニズムの解明と②sodium-glucose transporter (SGLT) -2阻害薬によるブドウ糖毒性の改善が膵β細胞量に与える効果に関しての検討を行った。①については、すでに7日間の短期高脂肪食誘導性膵β細胞増殖はインスリン抵抗性とは独立して起こり得ること、この増殖は長期高脂肪食誘導性インスリン抵抗性に対する膵β細胞増殖メカニズムにおいて重要なグルコキナーゼとIRS-2の発現上昇を伴わずに膵β細胞が増殖することを見出していた。その結果を踏まえ、単離膵島を用いてマイクロアレイ解析を行ったところ、普通食下マウス膵島に比し、7日間高脂肪食負荷マウスの膵島において、1.5倍以上有意に発現が亢進していた遺伝子が62個存在し、そのうち23個は細胞周期に関連する遺伝子であった。中でもクラスター解析でCcna2、Ccnb1、Cenpaが近傍に位置し、これらは細胞周期の調節に重要なFoxm1の下流に存在するものである。さらにreal-time PCR法により、Foxm1、Ccna2、Ccnb1の発現が高脂肪食負荷マウス膵島で有意に発現が上昇していることを明らかにした。以上より、短期高脂肪食誘導性膵β細胞増殖は、グルコキナーゼ、IRS-2を介する長期高脂肪食負荷誘導性膵β細胞増殖とは異なるメカニズムであることが示唆された。②については、肥満2型糖尿病モデルマウスであるdb/dbマウス雄6週齢を普通食飼育群とSGLT-2阻害薬混合食群に群別し、4週間の飼育後に各臓器を摘出した上で膵臓の組織切片を作成し、免疫組織化学的手法を用いて膵β細胞増殖能および膵β細胞量を比較検討した。その結果、db/dbマウスにおいてSGLT-2阻害薬の投与により耐糖能が改善し、膵β細胞量が保持されることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①高脂肪食誘導性膵β細胞増殖メカニズムの解明については、すでに学会発表等も行っており、②SGLT-2阻害薬によるブドウ糖毒性の改善が膵β細胞量に与える効果に関しての検討についても、国内外の学会で発表予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
①高脂肪食誘導性膵β細胞増殖メカニズムの解明については、短期高脂肪食負荷誘導性膵β細胞増殖は、グルコキナーゼとIRS-2の発現上昇を伴わずに膵β細胞が増殖することを見出したが、グルコキナーゼとIRS-2を介する経路か否かは明らかでない。そこで、膵β細胞特異的グルコキナーゼ欠損マウスおよびIRS-2欠損マウスに7日間高脂肪食を負荷し、膵β細胞の増殖能や膵β細胞量を比較検討し明らかにしていく。②SGLT-2阻害薬によるブドウ糖毒性の改善が膵β細胞量に与える効果に関しての検討については、膵β細胞量保持の要因として、増殖能の増加に加え、アポトーシスの低下や近年注目されている脱分化の関与についても検討していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
マウスの飼育の関係で、実験の遂行が遅れてしまったため
|
次年度使用額の使用計画 |
分子生物学的試薬に使用予定
|