高脂肪食誘導性膵β細胞増殖メカニズムの解明に関して、われわれは雄8週齢野生型マウスを普通食飼育マウス群と高脂肪食負荷マウス群に群別し、2、4、7日間飼育後に膵β細胞増殖能を比較した。その結果、膵β細胞のBrdU取り込み率は、負荷後7日目において高脂肪食群で有意に高値であった。20週間という長期高脂肪食誘導性インスリン抵抗性に対する膵β細胞増殖メカニズムにおいては、グルコキナーゼとInsulin receptor substrate (IRS) -2が重要な役割を果たしているが、上記の7日間という短期の高脂肪食負荷膵β細胞増殖メカニズムにおいて、グルコキナーゼとIRS-2が関与しているかは明らかでない。そこで、雄8週齢膵β細胞特異的グルコキナーゼヘテロ欠損マウスおよびIRS-2欠損マウスを上記同様普通食群と高脂肪食群に群別し、7日間飼育後に膵β細胞増殖能を比較したところ、野生型と同等に高脂肪食群でBrdU取り込み率は有意に高値であった。以上より短期高脂肪食負荷誘導性膵β細胞増殖メカニズムは、グルコキナーゼ、IRS-2非依存性であることを明らかにし、高脂肪食誘導性膵β細胞増殖メカニズムは高脂肪食負荷の期間で異なる可能性が示唆された。 SGLT2阻害薬によるブドウ糖毒性の改善が膵β細胞量に与える効果に関する検討に関しては、6週齢のdb/dbマウスに普通食またはSGLT2阻害薬含有普通食を摂取させ比較検討した。その結果、普通食群に比しSGLT2阻害薬含有普通食群で随時血糖の有意な低下、インスリン分泌能の改善のみならず膵β細胞量の有意な増加を認めた。さらに、より糖尿病の進行した14週齢のdb/dbマウスに同様の検討を行ったところ、若齢マウスで認められた膵β細胞量の増加は軽度にとどまった。以上より膵β細胞量保持の観点からも、早期の治療介入の重要性が示唆される結果となった。
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