研究課題
本研究は、メタボリックシンドロームにおける脂質代謝の変動を解明する事が目的である。そのために、中性脂質(トリアシルグリセロール(TAG))分子種の高感度測定系を作製し、コレステロールエステル(ChE)、リン脂質の各分子種と併せた一斉測定系を確立し、メタボリックシンドロームの病態における脂質変動を見出すことで、病因の解明および薬物治療への貢献、バイオマーカーの発見を目指すものである。そのために、まず高感度なTAG分子種測定系を液体クロマトグラフィーと質量分析計(MS)にて確立することを目標とした。様々なカラムや溶媒を試みTAG分子種の分離度を0.6から1.0程度にまで向上させること、MSのスケジュールドMRM法を用い測定上の高分離及び高感度化に成功した。これらの測定系にTAG分子種の他、リン脂質、ChE、ジアシルグリセロールなどの分子種も測定できるように設定し、多様な脂質の一斉測定を可能にした。構築した本測定系をTAG総量が増加する刺激を行った肝臓由来細胞に適応した結果、DHAを含む多価不飽和脂肪酸(PUFA)含有TAG分子種の増加がみられた(投稿準備中)。一方、飽和・一価不飽和脂肪酸のみからなるTAG分子種では変化がないか減少傾向にあった。ChE分子種も同様であった。一方リン脂質ではDHA含有リン脂質の減少傾向がみられた。3つの脂肪酸で構成されるTAG分子種のうち、飽和、一価不飽和脂肪酸も含むPUFA含有TAG分子種の変動を見出した本研究結果は、これまで汎用されていたTAGを脂肪酸量として評価するガスクロマトグラフィでは見出せない法則の発見であり、今後、疾患における酵素機能との関連を見出すための有用なツールとなるであろう。現在、ヒト非アルコール性脂肪肝炎や高脂肪食負荷マウスの試料について検討中であり、この結果はメタボリックシンドロームの病態の解明に寄与できるものと考える。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Cancer Discov
巻: 5 ページ: 730-739
10.1158/2159-8290.cd-14-1329