研究課題/領域番号 |
26860687
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小島 敏弥 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30625588)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | メタボリックシンドローム / 摂食調節 / KLF5 / AgRP |
研究実績の概要 |
肥満の増加は早急な対応を要する課題であり、その機序として摂食調節のメカニズムが重要である。視床下部弓状核は摂食中枢であり、摂食亢進に作用するAgouti-related peptide (AgRP)と摂食抑制に作用するpro-opiomelanocortin (POMC)が拮抗している。 これまで転写因子Kruppel-like factor 5 (KLF5) が視床下部における摂食調節に関与することを報告してきた。低グルコース刺激はKLF5をAgrpプロモーターから解離させる。AgrpはForkhead protein FoxO1により調節されているが、KLF5はFoxO1と結合することでAgrpプロモーター活性化を抑制し、非SUMO化KLF5及びSUMO特異的プロテアーゼSENP1はKLF5によるAgrpプロモーター抑制に拮抗した。これらはKLF5がFoxO1によるAgRPの活性化を抑制していること、その機構に翻訳後修飾であるSUMO化が関与していることを示唆する。 その上流としてAMPKに着目した。KLF5はAMPKによるAgrpプロモーター活性を減弱するが、KLF5結合部位のmutationによりそれがキャンセルされた。これはKLF5がAMPK、FoxO1、AgRPをつなぐ鍵因子であることを示唆する。 Agrp特異的Klf5ノックアウトマウスを作成したところ、摂餌量、体重が共に増加し、インスリン抵抗性を呈した。一方で、pair-feedingによりコントロール群と同量の摂餌量としたところ、体重に有意差を認めなかった。これは体重増加の表現型が摂餌量増加に依存していることを示唆する。 以上より、KLF5は、脂肪細胞分化、脂肪酸燃焼に加えて、摂食を調節し代謝制御に多面的に寄与することが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
グルコースとKLF5、FoxO1及びAgRPをつなぐシグナルの解明を進めており、エネルギーセンサーとしてのAMPKに着目している。AMPK活性化、不活化によりKLF5とFoxO1を介したAgRPの調節が影響を受けるという知見を得たが、タンパクレベルでの解析が進んでいない。 AgRPニューロン特異的KLF5ノックアウトマウスを用いたin vivo解析において表現型の違いを得たが、その他の解析を進める必要がある。 また、その他の摂食調節因子との相互作用についての検討を要する。
|
今後の研究の推進方策 |
グルコースとKLF5、FoxO1及びAgRPをつなぐシグナルの解明を進めており、エネルギーセンサーとしてのAMPKに着目している。AMPK活性化、不活化によりKLF5とFoxO1を介したAgRPの調節が影響を受けるという知見を得たが、更なる機構を解明する必要がある。 AgRPニューロン特異的KLF5ノックアウトマウスを用いたin vivo解析では、免疫組織化学によるKLF5、AgRPの確認をすると共に、神経活性の有無についても確認する必要がある。 また、GLP-1の膵外作用としてインスリンを介さない摂食抑制がある。Agrp特異的Klf5ノックアウトマウス脳へのGLP-1局所注入による摂食への影響や機序について検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
特異的ノックアウトマウスの作製および解析、培養細胞の維持および解析にあたり、当初よりも進展が遅延したため。
|
次年度使用額の使用計画 |
引き続き本研究において特異的ノックアウトマウスの作製および解析に対して使用する。また、培養細胞レベルでは視床下部神経細胞を中心に分子生物学的手法を多用して現象の解析を行う。 本研究の研究成果を社会・国民に発信する方法として、論文化による公表、学会への参加・発表・公表を予定しており、その諸費が見込まれる。
|