研究課題/領域番号 |
26860688
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高瀬 暁 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80508094)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 原発性脂質異常症 / whole genome sequence |
研究実績の概要 |
I型/V型脂質異常症では、責任遺伝子としてLPL、APOC2、APOA5、GPIHBP1、LMF1の変異が報告されているが、I型の34%、V型の75%はこれらに変異を認めない。本研究は、I型/V型脂質異常症を対象にwhole genome/exome sequence解析を施行し候補遺伝子を絞り込み、in vitro、in vivo解析を加えて病態機能の解明を目指すものである。我々が既に報告したapoC-II低下症(hypoapoC-II)は上記5遺伝子に変異を持たず、転写および転写後調節低下の可能性が示唆されていた。本症例にwhole genome sequence解析を施行したところ、APOC4の上流からAPOC2 ex1下流の約6kbpにread depthが約2倍読まれている領域が示され、paired endの両端が逆向きにマップされたsplit readが検出された。APOC4~APOC2 ex1 のpartial duplicationである可能性が示唆された。whole genome sequence解析から得られた知見を検証するためのin vitro解析、ゲノム構造異常が転写翻訳調節の障害を招いた可能性についての検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自験例のhypoapoC-II症例はLPL、APOC2、APOA5、GPIHBP1、LMF1に変異を認めなかったが、whole genome sequence解析によりAPOC4~APOC2 ex1 のpartial duplicationの可能性が示唆された。APOC2 ex1は非翻訳領域であるためAPOC2 翻訳領域をprobeに用いたサザンブロット解析では同duplicationを示唆する所見は認めない一方、APOC4 をprobeに用いた解析ではAPOC4~APOC2 ex1 のpartial duplicationとして矛盾しない結果が得られた。また、junction領域のPCRにより同領域はtandem repeatなduplicationである事が示唆された。既報とは異なるメカニズムのhypoapoC-IIである事が示唆され、更に解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
自験例のhypoapoC-II症例についてはarray CGH解析を施行し同領域のduplicationを確認する。他の原発性脂質異常症症例についてもwhole genome/exome sequence解析とarray CGH解析を併用し、網羅的に原発性脂質異常症症例の責任遺伝子探索を進める。候補遺伝子が絞り込まれれば、同遺伝子の変異、構造異常を持つ発現ベクターを作成し、in vitro解析、in vivo解析を行い病態機能の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度はin vitro解析を精力的に進めたが、解析にかなりの時間を要した。これと同時にarray CGH解析のための基礎検討を行い、次年度で脂質異常症患者を対象としたスクリーニングを行う準備を整えた。次年度はそれとあわせ当研究室にてリクルート済みの他の複数の脂質異常症症例についてのwhole genome/exome sequence解析を進めていく予定であり、in vitroでの更なる解析とあわせ、これらの用途に次年度の研究費が必要とされる。
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次年度使用額の使用計画 |
whole genome/exome sequence解析、array CGH解析を用いた原発性脂質異常症症例の網羅的解析とin vitro解析に研究費を使用する予定である。
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