I型/V型脂質異常症の責任遺伝子としてLPL、APOC2、APOA5、GPIHBP1、LMF1が報告されているが、I型の34%、V型の75%はこれらに変異を認めない。我々が報告したapoC-II低下症も上記5遺伝子に変異を認めなかった。本研究の目的はこれら原因不明のI型/V型脂質異常症症例に対する次世代シークエンサーを用いた変異同定および機能解析にある。 自験例のapoC-II低下症例にwhole genome sequence解析を施行したところAPOC4 ex1の上流からAPOC2 ex1の下流にpartial duplication(約6kbp)が示唆され、サザンブロット解析、breakpoint 解析により同領域のtandem duplicationが示された。主要遺伝子にpoint mutationを認めない他症例においてもlarge insertion/deletionが潜在する可能性を考慮し、array CGHを用いた糖・脂質代謝関連遺伝子の網羅的解析系を樹立し、解析を進めている。 後に追加されたapoC-II低下症(APOC2蛋白翻訳領域にcausative mutationを認めない)では、array CGH解析により自験例と同一領域にホモ接合性のduplication変異が示唆された。創始者効果の有無を検討すべく両家系の高密度SNPタイピングを施行したところ、同一祖先から派生した構造変異である可能性が示唆された。両家系とも劣性遺伝形式を呈しており、本研究で見出された新規構造変異によりapoC-II低下症を発症したと考えられた。
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