研究課題/領域番号 |
26860692
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
伊藤 美智子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 日本学術振興会特別研究員 (00581860)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 慢性炎症 / マクロファージ / crown-like structure |
研究実績の概要 |
NASHの病態形成においてマクロファージを中心とする慢性炎症が基盤となり、肝実質細胞や線維芽細胞などとの相互作用の結果、ダイナミックな形態学的変化に至ると考えられる。申請者らはメラノコルチン4型受容体欠損マウス(MC4R欠損マウス)を用いて、肥満による代謝障害を背景に脂肪肝から肝線維化を発症する新規NASHモデルを確立した。さらに、NASHの肝臓において細胞死に陥った肝細胞をマクロファージが取り囲むhCLS(hepatic crown-like structure)が多数認められ、炎症・線維化の起点となっていることを見出した。本研究ではhCLS構成マクロファージが活性化マクロファージマーカーであるCD11cを発現することから、CD11c遺伝子制御下にジフテリア毒素受容体(DTR)を発現し、ジフテリア毒素投与によってCD11c発現細胞を消去できるマウスを利用して、肝線維化におけるCD11c陽性マクロファージの関与を検討した。 MC4R欠損マウスに対して野生型あるいはCD11c-DTRマウスの骨髄を移植し、4週間の回復期間をおいた後に、20週間の高脂肪食負荷によってNASHを誘導した。ジフテリア毒素を腹腔内に単回投与し、経時的にサンプリングを行った。F4/80染色にてマクロファージを確認したところ、野生型マウスの骨髄を移植したコントロール群ではhCLSが多数認められたが、CD11c-DTRマウスの骨髄を移植した群では投与後1日目にはhCLSを含むF4/80陽性マクロファージが消失し、5日目にはほぼ回復した。CD11c染色では1日目にCD11c陽性細胞が消失し、5日目から10日目にかけて徐々に回復した。遺伝子発現ではマクロファージの消失とともにTGFβの発現が低下し、hCLSが線維化促進因子のソースとなってNASH発症に寄与していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はNASHを発症した肝臓においてCD11c陽性マクロファージを消去し、肝線維化に対する影響を評価した。これまで組織学的にhCLS数が線維化面積と相関を示すことや、hCLS近傍にコラーゲン沈着やαSMA陽性筋線維芽細胞が存在することから、hCLSが炎症・線維化の起点となっていることが示されていた。今回の検討により、実際にhCLSが線維化関連因子の産生を担っていることが示唆された。今後、マクロファージ消去の程度・期間を検討することで、肝線維化発症に対するhCLSの機能的意義が明らかになることが期待される。 NASHの病態形成におけるレプチンの関与に関しては、レプチン欠損MC4R-KOマウスの作成は終了しており、現在高脂肪食負荷を開始している。
|
今後の研究の推進方策 |
CD11c-DTRマウスからの骨髄移植実験において、現在はマクロファージの消去効率が高すぎるため、hCLS特異的な作用を検討できるよう、ジフテリア毒素の投与量を調整する。また、長期間のマクロファージ消去により、肝線維化発症・進展への影響をより詳細に検討する。hCLSを構成するマクロファージと散在性マクロファージの機能的相違を明らかにするため、TNFα、TGFβなどの免疫染色を行う。また、ヒトのhCLSがマウスと同様の活性化状態にあるか免疫染色にて検討する。レプチン欠損MC4R-KOマウスに対する高脂肪食負荷を行い、炎症性変化・線維化発症に対する影響を検討する。
|