Wolfram症候群(WFS)は、若年発症、インスリン依存性の糖尿病と視神経萎縮を特徴とする常染色体劣性遺伝性疾患である。原因遺伝子としてWFS1およびWFS2が同定されているが、厚生労働省難病克服事業「Wolfram症候群の実態調査に基づく早期診断法の確立と診療指針作成のための研究」によると、日本人ではWFS1およびWFS2に異常を有さないWolfram症候群患者が約30%存在することが明らかとなった。そこで我々はWFS1およびWFS2 に異常を認めないWolfram症候群患者において、未知の遺伝子異常を有している可能性が高いと考え、全エキソーム解析を行うことで新たな原因遺伝子の同定を試みた。 これまでに5例の患者エキソーム配列を取得し高品質のシーケンス結果が得られた。残り3例の配列についても解析を予定している。これまでの解析によって候補遺伝子を21個まで絞り、それらの遺伝子について、ダイレクトシークエンス等で詳細な検討を行っている。 既知の遺伝子WFS1に関しては、我々の研究室においてWFS1蛋白質が小胞体ストレス応答に関与することや、WFS1蛋白質は小胞体のみでなく、インスリン分泌顆粒に存在し、顆粒内の酸性化維持に必要であることを明らかにしている。最近、wfs1欠損マウスの単離ラ氏島において、時計遺伝子のmRNAの発現が変動している知見を得た。非常に興味深い発見と考え、現在時計遺伝子とwfs1遺伝子をつなぐメカニズムの解明を行っている。
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