研究実績の概要 |
近年、 インスリン抵抗性や動脈硬化に共通の病態として炎症の関与が明らかになってきた。 特にNLRP3インフラマソームはカスパーゼ1の活性化により炎症性サイトカインIL-1betaの産生を制御する分子複合体であるが、飽和脂肪酸などの脂質分子を危険シグナルとして感知することで活性化され、代謝性疾患の発症に関わる。 本研究では, 危険シグナル分子の代謝経路に介入することが、インフラマソームの活性制御に有効であるとの着想の下、 飽和脂肪酸によって活性化されるインフラマソームについて、その活性調節経路を明らかにしようと試みた。前年度までに脂肪酸Acyl-CoA合成阻害薬Triacsin Cを用いた検討により、細胞内における遊離の飽和脂肪酸の増加がインフラマソーム活性化を引き起こしていることを突き止めていたことから、本年度はその機序の解析を行った。インフラマソーム活性化を引き起こす機序としてリソソームの傷害を介した経路が知られていたことから、飽和脂肪酸であるパルミチン酸刺激時のリソソーム傷害について評価を行った。その結果パルミチン酸刺激はマクロファージ細胞株においてリソソームの傷害を引き起こしたが、これは不飽和脂肪酸であるオレイン酸の共処理により抑制された。リソソーム傷害を引き起こす因子として結晶が知られていたことから、マクロファージへ飽和脂肪酸を負荷した際の結晶形成について評価を行った所、飽和脂肪酸の負荷により細胞内に結晶形成が認められ、オレイン酸の共処理により抑制された。一方、飽和脂肪酸の結晶によりマクロファージを刺激したところ、インフラマソームの活性化が認められ、IL-1betaの産生が引き起こされた。これらの結果から飽和脂肪酸は結晶形成を介してインフラマソームの活性化を引き起こすことが明らかになった。
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