肥満とは脂肪組織が過剰に蓄積した状態であり、肥満によって2型糖尿病のリスクが高まる。脂肪組織を構成する脂肪細胞は、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞に機能的に分けられる。近年、白色脂肪細胞が存在する皮下脂肪組織中に褐色脂肪細胞様のベージュ脂肪細胞が存在することが報告され、ベージュ脂肪細胞の活性化機構や調節機構の解明が、肥満や糖尿病対策の観点から注目を集めている。 亜鉛トランスポーターZip13のノックアウトマウス(KOマウス)や変異型ZIP13を保持するエーラス・ダンロス症候群患者では脂肪萎縮症の存在が指摘されていたことから、脂肪組織におけるZIP13の役割に着目して解析を進めた。その結果、KOマウスの皮下脂肪組織でベージュ脂肪細胞が増加することを見いだした。詳細な解析の結果、ZIP13は細胞・個体レベルで脂肪細胞褐色化(ベージュ化)を抑制することが判明した。そこで本年度は、ZIP13の褐色化に必要な領域を同定することを目標とした。 ZIP13はZIPファミリーに属し、そのファミリー間で保存された膜貫通領域内のヒスチジン残基は亜鉛の輸送に必要であることが示唆されている。そこで膜貫通領域内のヒスチジン残基をアラニンに置換した変異体を作成した。この変異体は細胞内局在やホモフィリックな結合は野生体と同様であるが、亜鉛輸送能は低下していることが判明した。また変異体をKO細胞に導入しても褐色化抑制が出来ないことから、ZIP13の亜鉛輸送能が褐色化抑制に必要であることが明らかとなった(論文投稿中)。今後ZIP13 を介する亜鉛がどのように褐色化抑制を行うか、その分子機構の解明を行う。
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