糖尿病患者のマネージメントは糖尿病関連合併症を予防することが主要な目的である。適切な血糖コントロールが合併症を予防するが、Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes (ACCORD)試験において厳格な血糖管理が全死亡や心血管死を増加させうることが明らかになった。その結果は、血糖を低下させることで心血管イベントや死亡リスク上昇と関連する低血糖頻度が増加することが原因として考えられている。最近の我々の研究においてβ遮断薬は重症高血圧や低カリウム血症などの重症低血糖発症後の悪影響を予防もしくは減弱させ、重症低血糖が関連する不整脈や死亡が減らせるかもしれないことが示されている。しかし、β遮断薬は重症低血糖の発症リスクになりうることから、この結果は必ずしもβ遮断薬の使用が糖尿病患者に有効であるということを意味しない。そのため、我々はβ遮断薬の使用が糖尿病患者にとって有効かどうか、また、β遮断薬の使用が重症低血糖の発症リスクを上昇させるかどうかについて調査し結果を高血圧のトップジャーナルであるHypertensionで発表した。ACCORD試験のデータを用いて糖尿病患者におけるβ遮断薬の使用と心血管イベント、全死亡や心血管死、重症低血糖との関係を評価した。その結果、心血管イベントリスクはβ遮断薬使用群が非使用群より有意に高かった。また、全死亡リスクに関しては有意な差は認めなかったが、心血管死のリスクに関してはβ遮断薬使用群が非使用群より有意に高かった。本研究の結果からβ遮断薬の使用は心血管イベントのリスクを増加させる可能性が示唆された(Hypertension 2017;70:103-110)。今回の我々の研究結果は糖尿病診療に大きく貢献すると考えられる。
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