申請者は、炎症機構の一つであるインフラマソーム活性化機構の解明を目的として本研究を行った。手法として、タンパク複合体「インフラマソーム」を単離して、質量分析装置を用いて、複合体の構成タンパクの解析を行った。その結果、インフラマソームタンパク複合体中に、E3ユビキチンリガーゼ分子Aが含まれることを明らかにした(未発表データの為、以下分子Aと記載する)。E3ユビキチンリガーゼは、標的分子と結合してユビキチン修飾を誘導する機能を持つ。ユビキチン修飾は、標的分子の分解誘導や、機能修飾を行う。この分子Aは、インフラマソームの構成分子の一つであるNLRP3のNACHT領域に結合し、K48とK63を介したポリユビキチン鎖を形成することを明らかにした。分子Aは、未刺激の状態では、マクロファージの核と細胞質中に分散している。インフラマソームの活性化刺激が入ると、分子Aは、インフラマソーム複合体中に移動して、共局在することを明らかにした。 機能解析の結果、分子Aはインフラマソーム活性化に抑制的な働きを持つことを明らかにした。方法は、ヒト由来単球様細胞株のTHP-1細胞を用いて、分子Aの欠損株と強制発現株を作成した。これらの遺伝子組換細胞株にインフラマソームの活性化刺激を行うと、分子A欠損株ではインフラマソームの活性化が増強し、分子Aの強制発現株では、抑制された。 今後の課題として、以下の2点を検討している。1つは、分子Aによるインフラマソーム抑制機構の詳細は、明らかにすることである。分子Aによるユビキチン化は、どのようにして起きるか、そしてどのような作用を持つか、依然不明のままである。今後、NLRP3のユビキチンの修飾部位の決定や構造学的な解析が必要である。2つめは、病態モデルにおけるNLRP3インフラマソームの活性化に対して、分子Aの働きを解析する必要がある。現在、分子Aの欠損マウスの作成し、解析していく予定である。
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