研究課題
甲状腺濾胞細胞の基底膜側にあるsodium iodide symporter(NIS)は甲状腺ホルモン合成の最初の段階を司るヨード輸送体であり、甲状腺自己免疫生疾患や甲状腺がんなどに関与するなど様々な役割が明らかになっている。さらに、代表者の研究により自己免疫性甲状腺疾患治療薬である6-n-propyl-2-thiouracil(PTU) がNIS誘導作用を有する事が明らかになってきた。本研究はそのNIS誘導機序を解明し、ヒト甲状腺細胞における抗甲状腺薬の薬理作用や自己免疫性甲状腺疾患の病態抑制機構を見出すことを目的として行った。まず、ラット甲状腺FRTL-5細胞を用いDNAマイクロアレイによって網羅的に解析したPTU/MMI刺激下で変動する遺伝子やタンパク分析をもとに、抗甲状腺薬が影響を及ぼすシグナル伝達経路を絞り込み、シグナル伝達経路の主要タンパクおよびそのリン酸化の変動を解析した。その結果、抗甲状腺薬であるPTUおよびMMIが、甲状腺ホルモン前駆体であるモノヨードタイロシン(MIT)およびヂヨードタイロシン(DIT)の脱ヨード化に関わる酵素であり甲状腺ホルモン合成に重要な役割を果たすとともに、その遺伝子異常が先天性甲状腺機能低下症に関与している可能性があるDEHAL1の発現調節に関与していることがわかった。さらに、抗甲状腺薬によるDEHAL1の発現調節は甲状腺刺激因子TSHの存在および抗甲状腺薬の作用時間による調節を受けており、中でもPTUはTSH存在下でのみDEHAL1の遺伝子発現抑制作用を有する事を明らかにした。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Biochem Biophys Res Commun.
巻: 483 ページ: 541-546
10.1016/j.bbrc.2016.12.109
Thyroid
巻: 26 ページ: 1630-1639
10.1089/thy.2016.0187