研究実績の概要 |
申請者はプロホルモンとされて来た25(OH)D3やその誘導体がヒト正常前立腺細胞の細胞増殖を抑える効果があることを証明した。25(OH)D3はカルシウム上昇作用が弱く、CYP24A1による不活化を受けにくい。25(OH)D3を基盤にしたガン治療薬は副作用の少ないものになると期待される。本年度は25(OH)D3の増殖抑制作用の再現性を確認し、データをより頑健にすることを試みた。実験では正常前立腺細胞株 (PZ-HPV-7) を播種し、細胞培養溶液に25(OH)D3を添加後、細胞数をMTTアッセイで測定した。その結果、これまで観察された様に、10nM - 100 nMの25(OH)D3処理で細胞数は有意に増殖が抑えられた。またこのとき、ビタミンD受容体のターゲット遺伝子であるCYP24A1の転写活性化をリアルタイムPCRで解析したところ、CYP24A1 mRNA量は500倍以上となり著しく増加していることがわかった。このことから25(OH)D3はビタミンD受容体を介して作用していることが強く示唆された。これらの現象は活性型ビタミンD3である1a,25(OH)2D3処理でも1nMより同様の現象が観察された。 25(OH)D3の細胞増殖抑制作用が明らかになったことから、今後はその作用機構について詳細に検討していく。シスタチンやセマフォリンといったこれまでビタミンDとの関連が報告されていない分子・タンパク質が、25(OH)D3の細胞増殖抑制作用に関連するとのデータが得られつつあるので、このことを含め今後追求していく。
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