◯ビタミンDによるシスタチン転写制御について ビタミンDによる増殖抑制作用を受けにくい細胞 (DU-145)では、シスタチンやセマフォリンといった分子のビタミンDによる転写活性化を受けにくい。前年度ではこの作用にエピジェネティックな機構が関わることが示唆された。本年度はメチル化解析を試みたが定量的な解析を行うには至らなかった。 一方、これらの分子をDU-145に過剰発現させたところ、シスタチンを発現させた細胞はその増殖が抑えられた。DU-145がビタミンDに対して感受性が低い原因の一つとして、この分子の転写活性化が抑えられていることが考えられる。
◯CYP24A1の転写制御について また、DU-145では細胞密度によってビタミンDを不活性化するCYP24A1の転写活性化が起こることがわかった。YAP遺伝子は細胞密度に応じたシグナルを仲介することから、同分子を過剰発現させCYP24A1 mRNAの発現を解析したが顕著な影響は観られなかった。またCYP24A1の発現を正に調節するビタミンD受容体 (VDR)はリガンド依存的に核内に移行するが、細胞密度が上昇する事によっても同様の現象が見られた。このことが細胞密度依存的なCYP24A1発現に関わっているのかもしれない。リン酸化によるVDRの核内移行が知られている。今後VDRのリン酸化に関する研究を行う予定である。
|