研究課題/領域番号 |
26860715
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研究機関 | 独立行政法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
中村 明枝 独立行政法人国立成育医療研究センター, 分子内分泌研究部, 研究員 (90724708)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | カルシウム感知受容体(CASR) / カルシウム異常症 |
研究実績の概要 |
G蛋白共役受容体(GPCR)シグナル伝達の調節機構は不明な点が多い。我々は、先行研究としてGPCRであるカルシウム感知受容体(CASR)の変異受容体と受容体に対するアロステリックモデュレーターの効果についてin vitro で検討し、細胞内局在の変化がGPCR調節機構に関与していることを見いだした。またCASR異常症のみならず、CASRの細胞内局在に重要なタンパクであるAP2の異常や、CASRシグナル伝達で必要なGNA11遺伝子異常による常染色体優性遺伝副甲状腺機能低下症(ADH)、家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症(FHH)が同定された。今年度は、カルシウム異常症(高カルシウム、低カルシウム、尿中カルシウム排泄異常)を呈する症例を集積して、CASR遺伝子変異やその他のカルシウム代謝に関する遺伝子異常の有無について解析を行った。現在、24症例の解析が終了し、CASRに関しては、3症例(家族例1例、弧発例1例)に新規変異(Q27E、V833F)を同定した。Q27Eは細胞外領域のVFT領域に、V833Fは膜貫通領域の第7膜貫通部に存在しており、いずれも機能獲得型変異が多く存在している領域であった。Q27Eの変異が同定された家族例は、低カルシウム血症、相対的尿中カルシウム排泄の増加を認めており典型的な症例だが、V833Fが同定された症例は、大脳基底核の石灰化より血液検査を行ったところ、軽度の低カルシウム血症認めた症例である。 また、低カルシウム血症や尿中カルシウム排泄異常を来した症例で、次世代シークエンサーを用い、既知のカルシウム異常症の候補遺伝子をターゲットとしたターゲットリシークエンス解析を行ったところ、GATA3遺伝子変異を2例(既報変異R367X、新規変異R276Q)、FAM111A遺伝子、CLDN16遺伝子にそれぞれ、新規のミスセンス変異を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機能獲得方変異の新規変異と思われるQ27E、V833Fを同定できたが、それ以外のカルシウム異常症を呈する症例では、CASRの細胞膜表面の発現や、CASRの情報伝達等に関する遺伝子では変異は同定されなかった。しかし、その他の既知のカルシウム異常を呈する候補遺伝子に変異を同定した。CASR遺伝子に関してはいずれも新規変異であり、まだ、機能解析により機能獲得型変異であることは証明されていないため、今後、in vitroでの解析(細胞膜表面の発現、シグナル伝達の活性化、タンパク発現量、アロステリックモデュレーターに対する反応性など)を行い、その病態への関与について検討を行う。また、更なる症例数の蓄積によりCASR遺伝子や関連する遺伝子に更なる変異同定を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
今後、更にカルシウム異常症をきたす症例の解析数を増やし、CASR遺伝子の変異やその他のカルシウム異常を来す遺伝子変異を同定していく予定である。また、今年度、同定された新規変異(Q27E、V833F)については、HEK293細胞を用いて、Gq/11、Gi/0などの経路でのシグナル伝達の活性化や細胞膜表面の発現などについてin vitroにより機能解析を行う。更にアロステリックモデュレーターなどに対する効果なども検討を行う予定である。症例が蓄積すれば、過去に同定した変異も含め、phenotype-genotypeの相関について検討を行う予定である。既知のカルシウム異常症の責任遺伝子に変異が同定された症例に関しても、in vitroでの検討を考慮している。
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