我々は、GPCRであるカルシウム感知受容体(CASR)の変異受容体と受容体に対するアロステリックモデュレーターの効果についてin vitro で検討し、細胞内局在の変化がGPCR調節機構に関与していることを見いだした。最近、CASRの機能障害を来す原因として、CASR異常症のみならず、CASRの細胞内局在に重要なAP2S1遺伝子や、CASRシグナル伝達で必要なGNA11 遺伝子異常による常染色体優性遺伝副甲状腺機能低下症(ADH)、家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症(FHH)が同定された。我々は、カルシウム異常症(高カルシウム血症、低カルシウム血症、尿中カルシウム排泄異常)を呈する症例を集積して、CASR遺伝子変異やその他のカルシウム代謝に関する遺伝子異常の有無について解析を行った。24症例の解析が終了し、CASRに関しては、3症例(家族例1例、弧発例1例)に新規変異(Q27E、V833F)を同定した。Q27Eは細胞外領域のVFT領域に、V833Fは膜貫通領域の第7膜貫通部に存在しており、いずれも機能獲得型変異が多く存在している領域であった。Q27Eの変異が同定された家族例は、低カルシウム血症、相対的尿中カルシウム排泄の増加を認めており典型的な症例だったが、V833Fが同定された症例は、大脳基底核の石灰化を契機に血液検査を行ったところ、軽度の低カルシウム血症認めた症例であった。 また、低カルシウム血症や尿中カルシウム排泄異常を来した症例で、次世代シークエンサーを用い、既知のカルシウム異常症の候補遺伝子をターゲットとしたターゲットリシークエンス解析を行ったところ、GATA3遺伝子変異を2例(既報変異R367X、新規変異R276Q)、FAM111A遺伝子、CLDN16遺伝子にそれぞれ、新規のミスセンス変異を同定した。 更に、偽性副甲状腺機能低下症の家族例において、20番染色体の複雑な染色体構造を異常を全ゲノムシークエンス解析により同定した。
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