研究課題/領域番号 |
26860716
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大西 康 東北大学, 大学病院, 講師 (10509574)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | GATA2 / 樹状細胞 / MonoMAC症候群 |
研究実績の概要 |
樹状細胞(DC)は免疫応答において中心的な役割を担うが,DC分化のメカニズムに関する理解は未だ不十分である。ヒトでは転写因子GATA2のヘテロ異常により単球の減少や細胞内寄生菌に対する易感染性,骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病への進展を特徴とするMonoMAC症候群を発症するが,同症候群では単球減少に加えて、DCも減少することが知られている。GATA2は造血幹細胞の維持・増殖に必須の転写因子であり、再生不良性貧血などの血液疾患との関連も報告されている。そこで我々はDC分化におけるGATA2の役割を解析した。はじめにGATA2ヘテロノックアウトマウスの解析したが,DCの数に有意な変化は認められなかった。そこでタモキシフェン誘導性GATA2条件付きノックアウトマウス(GATA2 flox/flox/ER-Creマウス)を作成し,in vivoでGATA2をノックアウトしたところ,DCの著明な減少が認めた。次にDC分化にかかわる骨髄前駆細胞を分取し,in vitroでGATA2をノックアウトしながらDC分化を誘導したところ,LSK, CMP, そしてCDPから産生されるDCの数が減少した。この結果からGATA2がDC分化の“骨髄球系分化経路”において必要な機能を有することが示唆された。DC分化誘導条件下でGATA2をノックアウトしたDC前駆細胞のマイクロアレイ解析では,骨髄球系転写因子の発現低下と,T細胞系転写因子の発現上昇が認められた。CMPでのChIP解析からGATA2はGata3のプロモーター領域下流への結合が認められ,レポーター解析では同領域へのGata2の結合はGata3の転写抑制に働いていることが示唆された。以上のことから、Gata2は血液前駆細胞において骨髄球系細胞とT細胞への細胞運命の決定を調節することによりDC分化に関与していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
樹状細胞(DC)分化におけるGATA2の役割を解析するためにタモキシフェン誘導による条件付GATA2ノックアウトマウス(GATA2flox/flox/ER-Creマウス)を作成し、GATA2ノックアウトの影響をin vivoで解析することに成功した。GATA2は造血幹細胞の増殖・維持に重要な転写因子であり、GATA2のノックアウトにより各段階の骨髄前駆細胞の減少が観察された。さらに、今回の解析対象であるDCだけでなく、好中球、リンパ球、単球の減少も観察された。次に試験管内で骨髄前駆細胞からDCへ分化させる培養法において、タモキシフェン誘導によるGATA2ノックアウトの系を確立した。この実験系により、どの段階の骨髄前駆細胞においてDC分化にGATA2が必要となるのかを同定することが可能となった。更には、骨髄前駆細胞においてGATA2をノックアウトすることにより、どのような遺伝子発現の変化が誘導されるかを解析することができた。この実験により、骨髄球系およびリンパ球系の分化に必要とされる転写因子群の変化が観察され、DC分化との関連について検討を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
GATA2ノックアウトマウスの脾臓では好中球、B、T、NKリンパ球、単球が減少しているが、マクロファージは増加する。実際のMonoMac症候群はGATA2のヘテロ異常であり好中球、マクロファージ、T細胞には著変が見られない。MonoMac症候群における肺胞蛋白症では肺胞マクロファージの機能不全が想定されており、マクロファージの機能におけるGATA2の役割について今後の検討が必要である。また、自己複製能を持つマクロファージが脾臓で増加しやすい環境をGATA2欠失が誘導する可能性もあり、間葉系幹細胞などの造血環境におけるGATA2の役割について解析を進める必要がある。さらに、GATA2発現を制御しているメカニズムの解明について検討を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品の納品の遅延によって生じたものである
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次年度使用額の使用計画 |
物品納品に必要な経費として平成28年度請求額と合わせて使用する予定である
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