研究課題/領域番号 |
26860719
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
三村 尚也 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (00422220)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 多発性骨髄腫 / ヒストンメチル化 / EZH2 / EZH2阻害剤 / プロテアソーム阻害剤 |
研究実績の概要 |
ポリコーム群複合体PRC2を構成するEZH2はヒストンメチル化転移酵素活性を持ち、ヒストンH3のリジン27番のトリメチル化(H3K27me3)を介して標的遺伝子の転写抑制に関わり、固形がんやリンパ腫などにおいて腫瘍増殖を促進する。患者骨髄腫細胞にて、EZH2の高発現やH3K27の脱メチル化酵素であるUTXの機能喪失型変異が報告されており、骨髄腫においてEZH2が治療標的になる可能性を示唆している。本研究にて我々は、EZH2の骨髄腫における生物学的意義と、EZH2阻害による抗骨髄腫効果を解析中である。まずshRNA法を用いたEZH2ノックダウンにより骨髄腫細胞株は増殖抑制を来し、EZH2が骨髄腫細胞においてoncogenicな機能を持つ事を示した。そこで我々は、新規EZH2阻害剤UNC1999の抗骨髄腫効果を検討した。UNC1999は複数の骨髄腫細胞株において、時間・濃度依存性に増殖抑制効果を示し、細胞内のH3K27me3を抑制した。またマイクロアレイによるgene set enrichment analysis (GSEA) によって、ポリコームの標的遺伝子が脱抑制されている事を見出した。そしてNOGマウスを用いたヒト骨髄腫細胞株(MM.1S)皮下腫瘍モデルにおいて、UNC1999の腹腔内投与により、in vivoにおいても有意な腫瘍増殖の抑制が示された。更にUNC1999はプロテアソーム阻害剤ボルテゾミブとの併用療法において相加・相乗効果を示し、ボルテゾミブが誘導するアポトーシスを増幅した。以上の結果より、EZH2阻害は骨髄腫治療の新たな治療戦略になりうると考えている。また、UTXコンディショナルノックアウトマウスの作製と、BRAF変異マウスとのコンパウンドマウスの作製が進行中であり、骨髄腫のモデルマウスになりうるか解析を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画内容(EZH2ノックダウン骨髄腫細胞の解析、EZH2阻害剤のin vitroでの抗骨髄腫効果の解析、EZH2阻害剤と既存の薬剤との併用療法による抗骨髄腫効果の解析、UTXコンディショナルノックアウトマウスの作製と、BRAF変異マウスとのコンパウンドマウスの作製)がおおむね計画通りに進行しているため。
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今後の研究の推進方策 |
Xenograftモデルを用いて、EZH2阻害剤とボルテゾミブの併用療法の抗骨髄腫効果をin vivoでも明らかにする。また、EZH2阻害剤単独あるいはプロテアソーム阻害剤との併用療法における抗骨髄腫効果の詳細なメカニズムを、特にH3K27me3の修飾による遺伝子発現の面から詳細に解析する予定である。具体的には、RNAシークエンスやChIPシークエンスにより、骨髄腫細胞におけるEZH2の標的分子を解明したい。更にUTXコンディショナルノックアウトマウスあるいはBRAF変異マウスとのコンパウンドマウスの解析を行い、骨髄腫を発症すれば、EZH2阻害剤あるいはボルテゾミブとの併用療法による治療を試みる。
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