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2014 年度 実施状況報告書

骨髄増殖性腫瘍幹細胞のin vivo追跡と新規分子標的の同定

研究課題

研究課題/領域番号 26860721
研究機関東京大学

研究代表者

佐藤 智彦  東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90553694)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード骨髄性白血病 / 白血病幹細胞 / 造血幹細胞
研究実績の概要

インターフェロン誘導性Mx1-Cre;KrasG12DノックインマウスとEvi1-GFPノックインマウスを交配して、Evi1-GFPレポーターKras変異マウスを作製したが、CMML誘導後もGFP陽性細胞は白血病細胞で検出されず、KrasG12D白血病細胞の分化度の高さ(造血幹細胞レベルからより離れた)の程度が推測された。KrasG12D白血病細胞をさらに連続骨髄移植してもGFP陽性細胞は白血病細胞で検出されなかった。新規作製マウスであるASXL1変異ノックインマウスは、生後一年経過したが白血病もしくは骨髄異形成症候群を発症していない。また、本研究申請時点の予備実験と同じく、ASXL1変異ヘテロマウス(KI/wt)は正常マウス(wt/wt)に比較して明らかに小さな体格で、変異ホモマウス(KI/KI)はほとんど仔体として生まれず、数少ないKI/KIマウスは非常に小さな体格で、小眼球を認め、実際に先天性ヒトASXL1変異保有者の発達異常に似ていた。成体(およそ生後100日前後)KI/wtマウスとwt/wtマウス骨髄細胞を比較し、KI/wtでGr1+, Mac1+分画が多く、B220+分画は少なく、骨髄球系分化への偏りを示した。さらに未分化細胞分画では、KI/wtでLSK(Lin-Sca1+cKit+)分画とLS-K(Lin-Sca1-cKit+; 前駆細胞)分画が少なく、LS-K分画の中では、CMP, MEP分画はいずれも少ない傾向があり、GMP分画は多かった。これもASXL1変異による骨髄球系分化への偏りを示す可能性がある。in vitroコロニー形成能はKI/wt骨髄細胞で約2.3倍高く、KI/wt骨髄細胞は5代まで連続継代することができた(wt/wt骨髄は2-3代まで)。in vivoでの骨髄再構築能は、骨髄移植後5か月では両者でほぼ同じキメリズムを示している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

上記概要に加えて、ASXL1変異ノックインマウスに対して、他の遺伝子改変マウスとの交配もしくは、レトロウイルスによるoncogeneの導入で白血病モデル作成を試みている。現在は、ASXL1変異ノックインマウスとKras変異ノックインマウス、BCR-ABLトランスジェニックマウス、p53ノックアウトマウスとの交配を行っており、ASXL1変異ノックインマウス骨髄細胞にそれぞれBCR-ABL、IDH1変異、AML1-ETO遺伝子を導入して骨髄移植している。ASXL1 KI/wt細胞とwt/wt細胞へのレトロウイルスによるBCR-ABL導入では、両方とも骨髄移植後3週で慢性骨髄性白血病(CML)を発症し、死亡したため、生存に有意差は認めなかった。それ以外のモデルについては現在経過観察中である。また、ASXL1分子が生化学的にヒストン修飾に関与することから、KI/wt骨髄細胞とwt/wt骨髄細胞でのヒストン修飾を確認したが、双方でH3K27me3、H3K9me3そしてH3K4me3のいずれも変化を認めなかった。ASXL1変異ノックインマウスの血球系の表現型解析と生化学的解析、他分子との協調による白血病モデルの解析を進めている状況であり、現在までは、ASXL1変異による白血病発症機構、幹細胞への影響、そして明らかな分子機構を絞るところまでは到達していない。

今後の研究の推進方策

引き続き、ASXL1変異ノックインマウス(KI/wt)の骨髄・脾臓での造血幹細胞/前駆細胞の割合、各分画での造血細胞機能の変化を追跡する。CMMLまたはMDS/AML発症の有無を観察する。造血幹/前駆細胞分画における遺伝子発現解析をマイクロアレイ、シングルセルPCRで行いASXL1変異特異的なシグナル変化を同定する。さらに、ASXL1変異ノックインマウスとEvi1-GFPノックインマウスを交配して、Evi1レポーターASXL1変異マウスを作製する。Evi1高発現細胞の表現型、局在を解析する。ASXL1変異マウスがCMMLもしくはMDS/AMLを発症すればその細胞を用いてEvi1高発現/低発現細胞の白血病原性をin vivoで骨髄移植を用いて評価する。Evi1高発現ASXL1変異細胞と低発現細胞とで、遺伝子発現パターンをマイクロアレイもしくはシングルセルPCRで解析するとともに、DNA及びヒストンのメチル化パターンを、網羅的にメチローム解析する。ターゲット分子・経路が発見できたら各種ノックアウトマウスを用いてその分子・経路の重要性を検証する。各種の遺伝子改変マウスと交配して、白血病が起こりやすいマウスモデルを作製し、それぞれの系統でEvi1-GFPマウスを組み合わせて、同様にEvi1を指標にした幹細胞分画解析を進める。ASXL1変異ノックインマウスでCMMLもしくMDS/AML発症があれば、Evi1ノックアウトマウスと組み合わせて、その発症への影響を検証する。上記の解析結果に基づき、白血病幹細胞(Evi1高発現細胞)に関わる膜分子や受容体およびその下流シグナル分子の白血病幹細胞の維持における役割を、それらのノックアウトマウスやshRNAによるノックダウン、阻害剤、特異的抗体などにより検証する。それにより白血病幹細胞維持の鍵分子を同定し、それらを標的とする新規治療を開発する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Evi1 defines leukemia-initiating capacity and tyrosine kinase inhibitor resistance in chronic myeloid leukemia.2014

    • 著者名/発表者名
      Sato T, Goyama S, Kataoka K, Nasu R, Tsuruta-Kishino T, Kagoya Y, Nukina A, Kumagai K, Kubota N, Nakagawa M, Arai S, Yoshimi A, Honda H, Kadowaki T, Kurokawa M.
    • 雑誌名

      Oncogene

      巻: 33 ページ: 5028, 5038

    • DOI

      10.1038/onc.2014.108.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Evi1 Defines Leukemia-initiating Capacity and Tyrosine Kinase Inhibitor Resistance in Chronic Myeloid Leukemia2014

    • 著者名/発表者名
      Tomohiko Sato, Susumu Goyama, Keisuke Kataoka, Ryo Nasu, Takako Tsuruta-Kishino, Yuki Kagoya, Arika Nukina, Katsuyoshi Kumagai, Naoto Kubota, Masahiro Nakagawa, Shunya Arai, Akihide Yoshimi, Hiroaki Honda, Takashi Kadowaki and Mineo Kurokawa
    • 学会等名
      AACR 2014
    • 発表場所
      San Diego Convention Center
    • 年月日
      2014-04-05 – 2014-04-09

URL: 

公開日: 2016-06-01  

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