研究課題
MYH9異常症のモデルマウスであるR702Cノックインマウスを作製し、末梢血の血算測定を行ったところ、野生型マウスと比較して、Hbが有意差を持って、低い傾向にあることが確認された。同様にHt, MCVも野生型マウスと比較して低い傾向にあったが、赤血球のばらつきを示すRDWには違いは見られなかった。MYH9異常症はFocal Segmental Glomerulosclerosis(FSGS)により、腎機能障害を来す疾患であり、R702C変異を持つ患者は成人するまでに末期腎不全に至り、透析が必要となることが多い。その形質はこのノックインマウスでも表現されており、生後5週くらいから蛋白尿が出現し、病理組織学的にもSegmental Glomerulosclerosisをこの週齢から生じていることが確認されている。腎機能障害は進行性で、R702Cノックインマウスは30週位で腎不全にて死亡すると考えられている。このことから腎性貧血である可能性を否定するため、エリスロポエチン抗原量測定(ELISA法)を行ったところ、R702Cノックインマウスではエリスロポエチンが野生型マウスと比較して増加していることが判明し、貧血の原因は腎性貧血ではないことを確認された。既報から、MYH9がコードするタンパク質であるnon muscle myosinIIAは赤血球造血において、Cytokinesisや脱核に関与することが示唆されているため、貧血の原因が赤血球造血の異常にあるのではないかと考え、胎児肝細胞を用いて赤血球分化の検討を行った。方法は胎児肝細胞をほぐし、Ter119陰性細胞を培養し、CD71とTer119で展開し、経時的に評価したが、野生型と比較して、明らかな違いは認められなかった。今後はマウスの骨髄細胞と脾細胞を用いて評価を行っていく予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
2年目に行う予定であったマウス胎児肝細胞を用いた赤芽球系細胞の分化機能評価を既に終えた。現在、骨髄細胞と脾細胞を用いた造血能評価を行い、データが出そろいつつある。これにより貧血の原因理由についてほぼ探索を終えつつあり、これからは確認実験に移る。
貧血の原因理由について、証拠データを充実させるため、当初の予定にはなかった骨髄特異的ノックインマウスを作製し、解析を行う。その後は論文作成に入る。
キャンペーンを利用して、実験消耗品を予定より、安く購入できたため。
マウス骨髄細胞、脾細胞を用いた造血機能評価アッセイに必要な物品を購入する。具体的にはTer119, CD71抗体である。
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