研究課題
当グループで解析したヒトMYH9異常症の解析症例において、R702C変異を持つ症例はほかの変異を持つ症例に比較して、貧血傾向が強いことが窺われた。我々のグループは前研究において、Myh9 R702C変異を持つノックインマウスを作製し、表現型を解析、このマウスがヒトMYH9異常症の表現型を極めて忠実に再現することを報告した。本研究においては、このマウスを用いて、MYH9 R702C変異が赤血球系に与える影響を検討した。まず、末梢血所見を検討したところ、MYH9 R702Cマウスは野生型マウスと比較して、軽度の貧血症状が確認された。MYH9異常症では腎機能異常を呈するため、エリスロポエチンを測定し、腎性貧血の有無を調べたが、R702Cマウスでは野生型マウスと比較して、エリスロポエチンはむしろ上昇していた。次に一部のR702Cマウスでは網状赤血球が上昇していたため、パーパート法にて溶血性貧血のチェックをおこなったが、野生型と比較して溶血性に違いは見られなかった。造血能評価としては骨髄と脾臓の細胞を用いて、赤芽球系細胞の評価を行った。その結果、R702Cマウスでは骨髄にて幼若な赤芽球系細胞の減少と脾臓での髄外造血の亢進を認めた。この結果から、R702C変異による異常ミオシンが赤血球分化異常を引き起こすのではないかと考え、マウスの胎児肝細胞を用いて、エリスロポエチン添加の元、培養、赤芽球系細胞の分化過程について検討した。しかしながら、このアッセイ系では野生型と比較して、明らかな違いを見出すことは出来なかった。以上の検討から、MYH9 R702C変異は赤芽球系細胞のかなり上流の段階に影響を与えていると考えられた。
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Ann Hematol
巻: 95 ページ: 2506-9
10.1007/s00277-015-2506-9.