研究課題/領域番号 |
26860731
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
徳永 正浩 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90597410)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 血液発生 / コンディショナルノックアウトマウス / 造血幹細胞 / 貧血 |
研究実績の概要 |
われわれの哺乳動物ゲノムに関する知見は、全ゲノム配列の決定に伴い飛躍的に進歩した。一方、ヒトやマウスで2万以上と云われる、タンパク質をコードする遺伝子の多くの機能は未知のまま残されており、その解明が待たれる。研究代表者は、所属する研究室が独自に有するマウスホモ変異ES細胞ライブラリーをスクリーニングし、一つの機能未知遺伝子(未発表データのため遺伝子Xと記載)の変異体が著しい血球分化障害を示すことを見出した。さらにこの遺伝子のノックアウトマウスを作製し、遺伝子Xのノックアウト胚は胎生6.5日において致死であることを見出した。本研究では、この遺伝子の造血系特異的な機能を解析するために、造血系に特異的なコンディショナルノックアウトマウスを作製し、その解析を行った。 遺伝子Xは他組織に比して造血細胞において高い発現を認めることより、造血系特異的なノックアウトマウスが表現型を有する可能性が高いと考えられた。遺伝子Xの第3エクソンをlox配列で挟むようにターゲティングしたES細胞を胚にインジェクションして、2系統のキメラマウスを得た。造血系特異的なCre発現マウスとしてVav1-creマウスを用いて、造血細胞発生期における遺伝子X欠損の影響を観察した。交配によって得られた、X+/- Vav1-cre)とXflox/floxの仔を表現型解析に用いた。 コンディショナルノックアウト胚の表現型は胎生12.5日までは他の胚と全く差を認めなかったが、胎生14.5日より貧血を認め始め、胎生16.5日には顕著であった。また胎生14.5日胎児肝より採取した造血幹細胞分画を用いたコロニーアッセイにて、コロニー形成能が著明に低下していることを見いだした。 以上のことより、遺伝子Xは造血発生において極めて重要な役割を担っていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では平成26年度までに、遺伝子Xのコンディショナルノックアウトマウスの作製と解析の大半を終了する予定であった。実際にはコンディショナルノックアウトマウスの作製を既に終了し、Vav1-cre発現マウスを用いた血球系での表現型の解析をほとんど終了している。 以上より、平成26年度において概ね予定通りに研究目的を達成出来ていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子Xは胚発生においても、造血発生においても極めて重要な役割を担っていることが、ノックアウトマウス及び造血特異的なコンディショナルノックアウトマウスの解析から明らかとなった。 しかし現在のところ、遺伝子Xの分子学的メカニズムはほとんど明らかとなっていない。 今後は、胎児肝より採取した造血細胞などを使用して、その遺伝子発現プロファイルなどから遺伝子Xのメカニズムを少しでも多く明らかにして行きたい。
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