研究課題/領域番号 |
26860732
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
水野 紘樹 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (90707655)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 二光子励起顕微鏡 / intravital imaging / 慢性骨髄性白血病 |
研究実績の概要 |
1.慢性骨髄性白血病モデルの樹立:マウスLin-、c-Kit+、Sca-1+ (LSK)細胞にBCR-ABL(p210)iresEGFP遺伝子をレトロウイルスを用いて遺伝子導入し、CMLモデル細胞を作成する系を確立した。 2.in vitro実験:Fucci,SCAT3.1プローブ導入K562細胞を用いて薬効評価を行った。共焦点レーザー走査顕微鏡を用いてタイムラプス観察を行い薬剤投与時の腫瘍細胞の反応を観察した。imatinib mesylate、nilotinibは細胞周期に影響なく細胞死を誘導したが、cytarabine添加時には、S/G2/M期で細胞周期の停止した細胞が観察された。 3.慢性骨髄性白血病モデルマウスの作成:B6マウスに5Gyγ線全身照射後、樹立した細胞をマウス尾静脈より静注しCMLモデルマウスを作成した。未治療モデルは既報通りday28までに死亡することが確認された。また骨芽細胞を蛍光標識したマウス(Col1.1*2.3-ECFPマウス)でも同様にCMLモデルマウスが作成できることが確認された。 4.慢性骨髄性白血病モデルマウスにおけるイメージング手技の確立:骨髄イメージング技術によりマウス頭蓋骨内の骨髄を2光子励起顕微鏡にて観察した。BCR-ABL(p210)/EGFP陽性細胞は非常に発現が低く観察は困難であるが、イメージング技術を最適化することにより観察可能となった。骨髄内を遊走するBCR-ABL陽性細胞を観察することが可能となった。しかしながらBCR-ABLirestdTomato遺伝子をLSK細胞に導入した場合、蛍光が弱くintravital imagingには不適であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画通り順調に進展している。 1.慢性骨髄性白血病モデルの樹立:安定してBCR-ABL/EGFP陽性細胞を作成できる系を確立できた。 2.in vitro実験:Fucci,SCAT3.1プローブ導入K562細胞がin vitroで機能していることが確認され、今後in vivoで観察を行う場合の基礎データを得ることが出来た。 3.慢性骨髄性白血病モデルマウスの作成:CMLモデルマウスを作成する系を確立できた。また骨芽細胞やCXCL12高発現細網細胞を蛍光標識したマウスでも同様にCMLモデルマウスを作成でき、in vivoでの解析につなげることができると考えられる。 4.慢性骨髄性白血病モデルマウスにおけるイメージング手技の確立:研究実績欄に記載したとおりイメージング技術を最適化することにより観察可能となり、骨髄内を遊走する細胞を観察できた。蛍光が弱いという問題を克服するため全身がEGFPやtdTomatoで蛍光標識したLSK細胞にBCR-ABLを導入した後、BCR-ABL陽性細胞のみを更に単離し移植する系の確立にも取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに樹立したCMLモデルマウスを2光子励起顕微鏡で観察する系を用いてさらなるさらなる検討を進める。まずは慢性骨髄性白血病モデル細胞に対する薬剤の細胞動態に対する影響を検討する。CMLモデルマウスに化学療法を行い、骨髄内病変の変化を投与直後より経時的に観察・検討し、投与後の腫瘍細胞の動きの変化・残存する場所を同定する。また薬剤投与時に腫瘍細胞と骨芽細胞・CAR細胞などが着脱するかといった細胞同士の相互作用の解析を行う。さらに薬剤の骨髄微小環境に与える影響を検討する。薬剤投与が骨髄内の微小環境を構成する細胞に影響をあたえることが指摘されているため、薬剤投与後のCAR細胞や骨芽細胞など骨髄微小環境構成細胞に対する影響を観察する。また、新規治療標的の探索も行う。薬剤投与後、残存した腫瘍細胞を解析し、残存細胞に特異的な細胞の動き・腫瘍細胞周囲の微小環境などを同定する。残存細胞自体もしくは残存細胞周囲の骨髄間質細胞を単離。続いて腫瘍細胞のみならず骨髄間質細胞における治療標的となりうる遺伝子を同定する。
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