研究課題
本年度において、申請者はヒト骨髄由来Lineage-CD45-CD271+SSEA-4+ (DP)分画より樹立した間質細胞(MSC)に発現する、ヒト臍帯血由来CD34陰性(CD34-)造血幹細胞(HSC)からのCD34陽性(CD34+)HSC産生促進因子の探索のため、以下の実験を行った。最初に、他のMSCと比較し、DP MSCで特異的に高く発現する、既知のHSC支持因子のCD34- HSCに対する効果をin vitroで検討した。その結果、IGF-2およびJagged1がCD34- HSCからのCD34+細胞の産生に関わっていることが明らかとなった(Stem Cells, in press)。しかしながら、DP MSCによるCD34- HSCからのCD34+細胞産生促進効果の大部分は接着を介して行われていることも明らかとなった。そこで、次に、申請者があらかじめ作成していた、CD34- HSCを含む細胞集団に対する反応性を有する抗体ライブラリーを用いて、DP MSCによるCD34- HSCからのCD34+細胞産生阻害効果を有する抗体のスクリーニングを行った。具体的には、CD34- HSCを含む細胞集団とDP MSCの共培養系にハイブリドーマ由来抗体を添加することにより、スクリーニングを行った。その結果、CD34- HSCからのCD34+細胞産生能を著しく阻害する抗体産生ハイブリドーマ(4-4-1)を得た。Western Blottingによる解析から、4-4-1抗体の抗原はおよそ85 kDaの分子量を持つことが明らかとなった。現在、免疫沈降および質量分析により、この分子の同定を進めている。
2: おおむね順調に進展している
申請時における、本研究計画は以下の通りである。1) 人工ヌクレアーゼを用いるヒトHSCにおけるCD34抗原のknoc-out (KO)による機能解析2) ヒト臍帯血由来CD34+/- HSCおよび骨髄由来CD34+ HSCの幹細胞特性の比較解析3) CD34- HSCからCD34+ HSCへの転換誘導因子の同定と転換機構の解明1)に関しては、現在、CD34抗原のKOコンストラクトのデザインを進めている。2)に関しては、in vitroのコロニーアッセイ等により予備実験を進めている。3)に関しては、阻害抗体を用いた実験により、因子の同定を進めており。全体的としては、おおむね予定通り進行中である。
現在デザイン中の人工ヌクレアーゼによりヒトHSCを用いたCD34抗原のKO実験を進める。同時に、ヒト臍帯血由来CD34+/- HSCとヒト骨髄由来CD34+ HSCの幹細胞特性の比較も並行して行う。具体的には、コロニーアッセイおよび重症免疫不全マウスへの移植により、その骨髄再構築能を比較する。また、CD34- HSCからCD34+ HSCへの転換誘導因子の同定に関しても、質量分析を用いて進める予定である。
研究計画の範囲で執行を行った結果、残額として4054円が生じたため、次年度に繰り越した。
次年度の計画に沿って、消耗品代(試薬代)として使用する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件)
Stem Cells
巻: 33 ページ: 1554-1565
10.1002/stem.1941.
Blood Cancer Journal
巻: 5 ページ: e290
10.1038/bcj.2015.22.