前年度に網羅的に行った代謝産物の解析では、脂質系の代謝産物を検出することができなかった。しかしながら、本年度に実施した脂質系の代謝物に絞った解析によって、脂質の同定に成功した。前年度にin vitroの系でNUP98-HOXA9はFASNの活性を低下することを見いだしていたが、実際にNUP98-HOXA9を発現する白血病細胞では各種脂肪酸の量が正常造血細胞に比べて低いことが明らかとなった。 in vitroにおいて、FASN阻害剤がNUP98白血病細胞に選択的に有効であることを既に私は見いだしている。当該年度研究期間においては、FASN阻害剤のin vivoでの有効性の検討をマウスを用いた移植実験で試みた。しかしながら、用いたFASN阻害剤の毒性が強く、評価が難しかった。そこで、in vitroの系を用いてFASN阻害剤のNUP98白血病細胞の遺伝子発現に与える影響について検討した。その結果、FASN阻害剤はNUP98白血病の発症に重要なHOXA遺伝子の発現には影響を与えなかったが、NUP98白血病細胞をS期で増殖を停止させることが明らかとなった。FASNに対するshRNAを用いても同様の結果が得られた。 また、Fasn cKOのキメラマウス作製は完了したが、現在は戻し交配を行いCre発現マウスと交配を行っている状況であり、Fasn cKOマウスの解析は当該年度研究期間中に行うことができなかった。
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