当研究室では、関節リウマチ患者におけるIL-6シグナル選択的阻害剤トシリズマブの作用機序解明のため、DNAマイクロアレイを用いて末梢血CD4陽性T細胞の遺伝子発現を網羅的に解析した。その過程で、トシリズマブ有効例でIL-6シグナル阻害後に発現が低下する遺伝子を複数同定した(データ未発表)。それらの遺伝子のうち機能の詳細がこれまで不明であったARID5Aについて着目し研究を行った。 ヒトのCD4陽性T細胞をTh0/Th1/Th2/Th17の各条件で培養したところ、Th17条件下でのみARID5Aの発現増強を認めた。マウスでも同様にTh17細胞においてARID5Aの高発現を認めた。Stat3の阻害実験、及びRORgt欠損マウスを用いた解析により、ARID5Aの発現誘導はIL-6/Stat3経路により直接制御されており、Th17細胞への分化は必ずしも必要ないものと考えられた。 レトロウイルスによりARID5Aの強制発現を行ったマウスCD4陽性T細胞ではIL-17A/IL-17F産生およびIL-22産生が低下していた。免疫沈降法により、実際にARID5AがRORgtとタンパクレベルで結合していることを確認した。以上より、ARID5AはRORgtに結合することで直接Th17細胞分化を抑制していると考えられた。 また、ARID5AをマウスCD4陽性T細胞に強制発現させるとIL-21産生が亢進することを見出した。ARID5AとRORgtの共発現実験により、ARID5AはRORgt によるIL-21の産生抑制を阻害することにより、IL-21の産生を亢進させることが明らかとなった。RORgtはc-Mafへ結合することによりIL-21産生を抑制していることも明らかとなった。 ARID5A と高い相同性を有するARID5Bが、ARID5Aと同様の機能を持つのか否かに関して現在研究を進めている。
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