研究課題/領域番号 |
26860745
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
赤平 理紗 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70725192)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自己免疫 / 膠原病 |
研究実績の概要 |
全身性核内自己抗原に反応し機能的Foxp3を欠くRDBLSfマウスを作製し、このマウスに出現する自己反応性T細胞の挙動の解析により、clonal deletionやTreg細胞への分化以外に、トレランスの新規経路として自己反応性T細胞が胸腺でfollicular helper-like T 細胞(natural Tfh-like 細胞)へ分化する経路の存在を解明してきたが、その新規経路の特徴、メカニズムについて、引き続き基礎的検討を行った。natural Tfh-like 細胞は従来のTfh細胞と比較して、PD-1やCD200などの一部表面分子と転写因子Bcl-6やHeliosの発現、IL-21産生やB細胞の抗体産生誘導能などの機能面では共通点を有しているが、自己抗原認識、従来のTfh細胞マーカーであるCXCR5が陰性、胸腺分化の点が異なっていた。現在、これらの報告については論文投稿準備中である。 natural Tfh-like細胞のマスター遺伝子がBcl-6、主要表面マーカーはCD200であることから、多臓器に炎症を引き起こすBcl-6 欠損マウスの病態がnatural Tfh-like細胞の欠如と密接に関わっている可能性が考えられ、またこれまでも抑制性signalに関わるCD200-CD200Rの相互作用が自己免疫性の炎症性疾患に制御的に機能していると考えられておりCD200欠損マウスの病態がnatural Tfh-like細胞が関わる制御機構が消失する為に起こると仮説が立てられた。Bcl-6欠損マウス、CD200欠損マウスなどの遺伝子改変マウスの準備を行いつつ、natural Tfh-like細胞の自己免疫制御などの生体的意義を検討するため、natural Tfh-like細胞をCD200+CD4+細胞としてMACSにて分離精製し移入実験などの準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Bcl-6 欠損マウスの遺伝子改変マウスを得るためにDBLマウス(全身性自己抗原反応性TCR発現Tgマウス)等を交配し、すべてのT細胞が全身性自己抗原反応性でBcl-6を欠損するマウス(RDBL Bcl-6KOマウス)などの準備は継続中である。しかしながら、IL21-R欠損マウス、CD200 欠損マウスを背景とした遺伝子改変マウスの用意が困難であり、依然やや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
natural Tfh-like細胞の生体的意義を検討するため、Bcl-6欠損マウス、CD200欠損マウスにnatural Tfh-like細胞を移入し、多臓器の炎症が改善するかどうかを検討し、自然抗体の形成への関連も検討したい。 またヒトの自己免疫疾患の1つである全身性エリテマトーデス(SLE)とCD200、PD-1との関わりが指摘されているがnatural Tfh-like細胞としての観点からの評価はなされていないことから、SLEとCD200+PD-1+発現T細胞の動態を検討する。SLEではPD-1 の発現が低下することでnatural Tfh-like 細胞の制御が解除され自己抗体産生亢進のバランスに傾き病的状態が惹起されること、またCD200R1の発現が低下しているために適切にCD200-CD200Rを経由した抑制的なsignalが伝達されずnatural Tfh-like 細胞がB細胞helper機能のバランスに傾き抗体産生亢進するという仮説を検証するため、全身性自己免疫疾患におけるnatural Tfh-like 細胞やCD200-CD200R抑制系の評価としてsCD200、sCD200Rの測定をヒトの血液サンプルを用いて行い病的意義を検討したい。
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