研究課題/領域番号 |
26860747
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
藤井 博 金沢大学, 大学病院, 助教 (20596895)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / 関節炎 |
研究実績の概要 |
抗生剤投与による関節炎の予防及び治療実験 平成26年度に糞便よりDNAを抽出し、16SrRNAに対するPCRを行った。この結果、WT、CCR2-/-マウス、IL-1ra-/-マウス、IL-1ra-/-CCR2-/-マウスの腸内細菌叢には明らかな変化は認められなかった。このため当初は次世代シーケンサーを用いて狭いスペクトラムの抗生剤にて選択的に腸内細菌を操作し、関節炎の経過に変化がないかフォローする予定であったが、まず広域抗生剤にて腸管細菌叢を劇的に変動させ、それで関節炎の経過が改善するかどうかを検討した。あらかじめ予備実験にて腸内細菌を1/1000以下に減らすことができることを確認した抗生剤カクテル(ドリペネム+バンコマイシン)を自由飲水で投与した。予防投与については生後4週から、治療投与については生後10週から抗生剤の投与を行い、継時的に関節炎の臨床スコア、骨密度、病理組織をモニターした。この結果、①抗生剤を関節炎発症前の早期から投与した群では早期に関節炎の軽減があるが、その後生後14週辺りからその差はなくなること、②関節炎発症後(10週)から抗生剤を投与した群では改善が得られないこと③IL-1ra-/-CCR2-/-マウスではIL-1ra-/-マウスと比較してこの傾向はあまりはっきりしないという結果を得た。この結果をもとに、現在関節組織内の炎症細胞サブセットを免疫染色及びフローサイトメトリーにて評価を行っている。また、腸管組織については大腸全長の組織標本を作成し、免疫染色での評価を予定している。
糞便の細菌DNAの評価 抗生剤を初期に投与した群で認められる一時的な関節炎の改善について原因を検討するため、継時的に糞便を採取し、DNAを抽出した。途中で菌交代が起きて関節炎が増悪したのか、腸内細菌に変化はないのかを検討するためメタゲノム解析で検討予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
次世代シーケンサーを用いた菌叢解析までまだ至っていない。抗生剤投与後20週まで細菌叢のDNAをフォローしているが、16SrRNAのPCR結果からは、菌交代を疑うようなDNA量の増加は認めておらず、一貫して著明な菌量の低下が認められている。このため次世代シーケンサーを用いて解析しても原因菌の推定が困難である可能性が高い。研究費の問題もあり、次世代シーケンサーを用いた細菌叢の解析を行う前に、腸内細菌を劇的に減少させた後の腸管免疫、腸間膜リンパ節、関節組織などにおける免疫応答の変化を優先して検討する予定を考えている。
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今後の研究の推進方策 |
関節、腸管の免疫染色、フローサイトメトリーを行う。作業を切り分け、実験補助員にも補助してもらうことで効率的に実験を進める。腸管免疫細胞についてはパターン認識受容体の発現レベルやサイトカイン分泌能などを検討し、関節炎との関連を検討する。次世代シーケンサーによる菌叢の解析については外注でのコストも低下しており、外注での解析も考慮する。途中経過は来年度の日本リウマチ学会にて発表予定とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次世代シーケンサーによる解析ができていないため費用が残っている。
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次年度使用額の使用計画 |
次世代シーケンサーによる解析、抗体など免疫反応評価のための試薬購入に充てる予定である。
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