研究課題/領域番号 |
26860751
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
吉田 幸祐 神戸大学, 保健学研究科, 研究員 (80452499)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / 時計遺伝子 / 関節リウマチ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、関節リウマチ(RA)滑膜細胞の増殖機構に、日内リズムを制御する時計遺伝子がどのような役割を果たしているかを明らかにすることである。これまでの研究では、炎症性サイトカインTNF-alphaが存在すると、時計遺伝子の一つであるPer2遺伝子が強力に抑制されていた。Per2遺伝子を持たないマウスではがんを自然発症することから、炎症性サイトカインによるPer2抑制は、RA滑膜細胞の腫瘍様ともいえる増殖機構を説明できる可能性がある。 [内容]26年度は「なぜ炎症性サイトカイン存在下でPer2抑制が起こるのか」に焦点を当てた結果、その現象の一部にカルシウムシグナルが関与していることが明らかになった。すなわち、カルシウムイオンキレート剤BAPTA-AMにより前処理しておくと、TNF-alphaによるPer2 mRNA発現抑制が阻害された。興味深いことに、カルシニューリン阻害薬であり抗リウマチ薬のひとつであるタクロリムスFK-506では、その効果はみとめられず、NFATを介した現象ではなかった。これらの現象はPer2の発現を直接制御する転写促進因子Dbp, Hlf, Tefでも認めれた一方、転写抑制因子E4bp4では認められなかった。同様に、RA滑膜細胞の細胞増殖能を調べてみると、TNF-alphaによる増殖能の亢進がBAPTA-AMで阻害され、FK-506では阻害されなかった。以上のことから、カルシウムシグナルの阻害により、時計遺伝子を介してRA滑膜細胞の増殖機構を調節できる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、TNF-alpha刺激によるPer2遺伝子発現低下がどのようにして起こるかという課題に対して取り組み、そこにはカルシウムシグナルが関与していることが明らかにした。これまでの研究成果と合わせると、RA滑膜細胞において、TNF-alpha→カルシウムシグナル→Dox結合タンパクの変調→Per2遺伝子発現低下、という一連の流れが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は26年度に得られた結果に基づき、Per2の低下がRA滑膜細胞の増殖能に与える影響を明らかにする。siRNAを用いてPer2発現量をノックダウンさせたRA滑膜細胞を作成し、細胞増殖アッセイやウェスタンブロット法、qPCRを用いてMAPK系やPI3K/Akt系、caspase群系の発現量やリン酸化の程度を比較する。また関節炎モデルマウスを用いて、関節炎誘導によって変調を来した日内リズムがカルシウムシグナル阻害によって改善するかを検討するとともに、関節炎に及ぼす影響を検討する。関節炎の程度は関節炎スコア、血清中炎症性サイトカインやMMP-3、関節局所における病理組織像などを用いて評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度は当初計画に対しておおむね順調に進行しており、27年度の計画実施とさらなる研究発展のために当該研究費が必要となる。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度研究計画にもとづき、Per2低下によるRA滑膜細胞の増殖能に及ぼす影響を検討し、関節炎モデルマウスを用いてカルシウムシグナル阻害による時計遺伝子に対する影響と関節炎に対する治療効果を検討する。当該研究費は、研究に際し必要な分子生物学的試薬や実験動物などの消耗品に使用する。また研究成果の公表のための学会投稿費や論文投稿料などに使用する。
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