研究課題/領域番号 |
26860755
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
坂本 夏美 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (60528090)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | IRF-1 / IgG4関連腎臓病 / 尿細管間質性腎炎 |
研究実績の概要 |
IgG4関連疾患は近年注目を集めている慢性炎症性疾患である。本疾患では自己免疫の関与が示唆され、血清IgG4高値、病変部でのTh2優位のサイトカイン産生などが報告されているが未だその病態機序はほとんど明らかにされていない。 我々はこれまでに転写因子Irf-1を欠損する自己免疫疾患モデルマウス(MRL/lpr系)、Irf1-KO MRL/lprマウスが12週齡以降でIgG4関連腎臓病と類似した間質性腎炎を自然発症し、一方、非自己免疫系のIrf1-KO C57BL/6マウスでは発症しないことを報告した。Irf1-KO MRL/lprマウスでは腎間質へのCD4陽性T細胞・好酸球の高度浸潤、ならびに腎臓・脾臓におけるIL-4産生性Th2細胞の著明な増加を認め、ヒトIgG4関連腎臓病のモデルとして有用であると考えられた。そこで、我々はIrf1-KO MRL/lprマウスの間質性腎炎を病理組織学的、血清生化学的、病態生理学的に詳細に解析してヒトIgG4関連腎臓病の病態と比較することで、そのモデルとしての有用性を明らかにし、さらに病態形成における自己反応性Th2細胞を介したメカニズムを推定しようと考えた。 これまでは主に病理組織学的な解析を行ってきた。その解析の結果からは本マウスは腎の病変像がヒトIgG4関連腎臓病のそれと酷似していることから有用な疾患モデルとなり得ることに加え、肺にCD68陽性マクロファージの浸潤・異物型巨細胞形成・類上皮細胞結節を主体とするびまん性の肉芽腫性炎症を認め、肺に炎症性病変を来す症例のメカニズム解明にも有用なモデルとなると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
病理組織学的検討に時間を要し、平成26年度に予定していた病態生理学的および免疫血清学的検索を終了できていない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは主に18週齢のIrf1-KO MRL/lprマウスの解析を行ってきたが、さらに9、12、15週齢の血清、尿、腎の採取をほぼ終了しており、間もなく目的の検体がすべてそろう予定である。そのため、今年度中にそれらの解析を行い病態がどのように形成されていくのかを検討していく。また、血清、尿の血清免疫学的解析を行ってヒトIgG4関連腎臓病の臨床所見と対比させ、Irf1-KO MRL/lprマウスがIgG4関連腎臓病の疾患モデルマウスとして有用であるかどうかをさらに詳しく検討する。 また、その間質性腎炎の病態形成における自己反応性Th2細胞の役割を調べるため、レシピエントマウスのX線照射による移入前処置条件を検討中であるが、MRL/lprマウスは放射線感受性が高く、免疫抑制状態と死亡の間の域値が非常に狭いため、現時点では条件設定が確立できていない。そのため、X線照射による条件検討をすすめるとともに、免疫抑制薬投与による移入前処置も考え条件を検討中の他、Rag2ノックアウト系のマウスの使用も考慮している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に使用予定の試薬などで、研究の進行の遅れからまだ購入していないものがあるため。
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次年度使用額の使用計画 |
購入予定の物品についてはリストアップ済みであり、使用予定に合わせて適宜購入していく。
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