本年度の研究では、自己免疫を示すMRL/lprマウスのIrf1+/+、Irf1+/-、Irf1-/-各群について、18週齢における血清・尿の解析ならびに、免疫組織化学染色による腎臓の病理組織学的評価を行い、ヒトIgG4関連腎臓病の病態との比較を行った。 血清中のBUN値について各群で比較を行った結果、3群間の有意差は認められなかったが、3群共に健常マウスと比較して高値を示した。尿中のアルブミン量を測定した結果、野生型と比較してIrf1-/- MRL/lprマウスで低値を示す傾向であったが、有意差は認められなかった。BUNの結果より、野生型で起こる糸球体病変がIrf1-/-群では改善されるのに対し、間質の炎症性病変を発症するために腎機能の改善が認められないことが示唆された。 18週齢のIrf1-/- MRL/lprマウスの腎の免疫染色の結果、浸潤領域のほぼ全域が形質細胞マーカーであるCD138陽性を示した。さらに、同領域の一部に抗マウスIgG1抗体で染色される細胞が検出され、IgG1産生性の形質細胞がIrf1-/- MRL/lprマウスの腎に浸潤していることが示唆された。マウスはIgG4アイソタイプの抗体を産生しないが、ヒトのIgG4と最も類似した性質を持つマウスの抗体クラスはIgG1であると言われている。我々のマウスにおけるIgG1陽性形質細胞の浸潤が病態形成に関わるのか、発症の結果見られているものかは定かではないが、浸潤細胞における類似の病態が認められた。その他のCD138陽性領域の細胞については、これまでに検出していたCD4陽性T細胞ではないことも明らかにしたが、細胞種の同定はできておらず、今後の検討項目として考えている。
|