研究実績の概要 |
ループス腎炎(LN)は全身性エリテマトーデス(SLE)の予後を左右する重要臓器病変である.マクロファージ(Mφ)を介した自然免疫応答がSLEの病態進展に重要であり,以前の研究からSLEでは相対的なM2 Mφの機能低下が予想された.ヘムオキシゲナーゼ(HO)-1はM2 Mφに高発現し,種々の病態で抗炎症作用を示す.本研究は,LN検体とHO-1転写抑制因子Bach1欠損MRL/lprマウスの解析を通じて,SLE患者のM2 Mφの相対的機能低下の証明,HO-1発現誘導によるM2 Mφの分化促進,機能促進とそれによるLNの重症化抑制効果・治療効果の証明を目的とし,本年度は昨年度からの実験を継続し,以下の成果を得た. ①LN腎生検標本の解析と臨床データとの比較;LN 19検体(17検体がISN/RPN分類のⅢまたはⅣ型,全例活動性病変を含む)で検討.糸球体にはM1 Mφに比べM2 Mφが多く浸潤し(p<0.01),生検時の蛋白尿と浸潤M1 Mφ,M2 Mφ数は各々相関した(r=0.56, r=0.66).興味深いことに,糸球体に浸潤したCD163陽性M2 Mφのうち,HO-1発現細胞はごくわずかであった.このことから,活動性LNの環境下では,M2 MφのHO-1発現が低下し,それにより炎症が持続,促進される可能性が考えられた. ②ヒトM2 Mφのin vitro解析;健常人末梢血単球から分化させたM1Mφ,M2MφをLPS, IFNα2b,IFNβで刺激したところ,M2 Mφにおいて有意にHO-1 mRNA発現量が低下した. ③Bach1欠損MRL/lprマウスの解析;MRL/lpr Bach1 -/-は野生型に比べ,生存期間が延長し,尿蛋白量は減量した.
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