ループス腎炎(LN)は全身性エリテマトーデス(SLE)の予後を左右する重要臓器病変である。マクロファージ(Mφ)を介した自然免疫応答がSLEの病態進展に重要であるが、以前の研究からSLEでは相対的なM2 Mφの機能低下が予想された。ヘムオキシゲナーゼ(HO)-1はM2 Mφに高発現し、種々の病態で抗炎症作用を示す。本研究は、LN検体とHO-1転写抑制因子Bach1欠損MRL/lprマウスの解析を通じて、SLE患者のM2 Mφの相対的機能低下の証明、HO-1発現誘導によるM2 Mφの分化促進、機能促進とそれによるLNの重症化抑制効果・治療効果を証明することを目的とし、以下の成果を得た。 ① LN腎生検標本の解析;糸球体にはM2 Mφの浸潤が優勢であったが、M2 MφのHO-1発現は低下していた。糸球体への浸潤M2 Mφ数と尿蛋白量は正の相関を認めた。 ② In vitroでのM2 Mφの検討;健常人PBMCから分化させたM2 Mφへのtype 1 IFN刺激でHO-1発現が低下し、同時にBach1 mRNA、IL-6 mRNA量が増加した。SLE患者PBMCでの検討も同様の結果であった。 ③ Bach1欠損MRL/lprマウスの解析;Bach1欠損マウスは、同種野生型に比べ、有意に生存期間が延長し、尿蛋白量が減少した。Bach1欠損マウスの腎組織では、CD163とHO-1発現量が増加し、IFNα発現量は低下していた。Bach1欠損マウスへのLPS腹腔内投与で得たMφは、CD163とHO-1発現が亢進していた。 以上から、LNではM2 MφのHO-1発現が低下し炎症性に働くこと、Bach1作用の阻害によりHO-1発現促進を介してM2 Mφの抗炎症作用を回復させることを示した。Bach1はLNの治療ターゲットとなりうる。
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