研究課題
本研究では、皮膚免疫応答において重要な役割を担っているとされる、γδT細胞(dendritic epidermal T cells; DETCs)について、その機能を明確にすべく、DETCsに特化した解析ツールの開発を目指している。具体的には、DETCs特異的に発現する遺伝子の同定を行い、その遺伝子を標的とした遺伝子改変マウスの作成および解析が主な目的である。これまでに、マイクロアレイを用いた解析から、DETCs特異的に発現する遺伝子候補として500遺伝子を得た後、遺伝子解析ソフトやPCR解析を用いた絞り込み作業を行ってきており、本年度は65遺伝子にまで絞り込むことができた。候補遺伝子のうち、脳で発現があるとされる遺伝子の割合が多い状況は依然としてかわらず、更なる絞り込みを行った現段階においても、特に膜表面受容体や転写因子をコードする遺伝子にて神経細胞で発現するとされる遺伝子の割合が多く、大変興味深い。現在得られている候補遺伝子は、DETCsはもとより皮膚組織との関連性について報告がなされていない為、今後の更なる解析により、DETCsの新規機能を含めた、皮膚組織における新しい理解が得られることが期待される。現在、表皮および胎生14.5日の胸腺から得たDETCsを用いて、更なる候補遺伝子の絞り込み作業を行っている段階である。今後、得られた遺伝子を標的とした遺伝子改変マウスの作製を予定している。以前からDETCsの関与が示唆されている接触性皮膚炎を作製したマウスへ誘導し、その解析を行うことで、DETCsの機能を探ることも視野に入れ、研究を進めている。
3: やや遅れている
昨年度、DETCs特異的に発現する遺伝子の絞り込み作業におけるPCR解析にて、各候補遺伝子の反応条件を見いだす作業に予定よりも時間がかかったことが影響し、当初の計画よりも予定がずれ込んでいる状況である。従って、本研究の現在までの達成度はやや遅れているといえる。
DETCsの機能を明確にするため、利便性のある遺伝子改変マウスの作製およびその解析に向け、引き続きDETCs特異的に発現する遺伝子の絞り込み作業を実施するが、標的遺伝子の同定後、遺伝子改変マウスが予定通り産まれない可能性が考えられる。その対策として、標的遺伝子の絞り込み作業を行いながら、抗体を得ることができる分子に関しては、DETCsの活性化(サイトカイン産生や形態変化等)や接触性皮膚炎との関連性を評価する等、タンパク質レベルでの解析も同時に進める。一方で、同定したDETCs特異的遺伝子を発現する細胞が人の皮膚組織に存在するかについても検討し、これら結果を論文としてまとめる予定である。
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Biochemistry and Biophysics Reports
巻: 5 ページ: 191-195
10.1016/j.bbrep.2015.12.007