研究課題
前年度にワクチン効果を判定するために、51Crを用いた細胞傷害性試験を行ったが、感度が低く特異的T細胞反応を検出することはできなかった。このことから高感度で特異的T細胞反応を検出する実験系が必要だと考え、私はフローサイトメーターを用いた新しい細胞傷害性試験を確立した。この方法は、放射性同位元素を用いないため被曝の恐れがなく、非常に感度よく細胞傷害活性の測定ができると同時に、マルチパラメーターを測定することができる利点がある。今年度はこの方法をさらに改良することを目的とした。インフルエンザウイルスのM1タンパク質を発現する組換えアデノウイルスを、HLA-A2トランスジェニックマウスに免疫し、1週間後に脾臓を摘出し脾リンパ球をCTLとして用い、標的細胞はHLA-A2とGFPを発現するC1R細胞(C1R-A2-GFP)にペプチドをパルスしたもの、もしくはインフルエンザウイルスを感染させ抗原を内在的に発現させたものを用いた。標的細胞の生死をPropidium Iodide染色により評価した。この実験により以下の結果が得られた。1) 試験管内で抗原刺激を行わないプライマリーCTLの細胞傷害活性も高感度に測定できた。2) アポトーシスのマーカーであるAnnexin-VやCaspase-3の測定も同時に行うことができた。3) CTLの免疫チェックポイント分子の測定も同時に行うことができた。4) CD107aやIFN-gammaのCTL活性も同時に行うことができた。以上の結果から、プライマリーCTLを用いて高感度で細胞傷害活性を測定できる本法は、がんやウイルス感染患者のCTL活性を早期に測定できるため、テーラーメイド治療など臨床に応用できるのではないかと考えられる。
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Biochemical and Biophysical Research Communications.
巻: Oct 7;492(1) ページ: 27-32
10.1016/j.bbrc.2017.08.045.