研究課題/領域番号 |
26860773
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
中野 竜一 帝京大学, 医学部, 助教 (80433712)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 薬剤耐性菌 / 家畜 / 臨床 / CTX-M型 β-ラクタマーゼ / カルバペネマーゼ |
研究実績の概要 |
本研究では臨床などで蔓延する薬剤耐性菌の出現背景を包括的に解明すべく、臨床ならびに家畜とその農家における耐性菌の実態調査を行った。カルバペネマーゼ産生菌などその蔓延が危惧される耐性菌については分子遺伝学的手法により詳細を明らかにした。本年度は下記について検討した。 ①家畜とその飼育者における耐性菌の実態解明 牛、豚を対象とした家畜ならびにその農家の糞便を収集し、グラム陰性菌の分離同定を行った。最も多く分離された大腸菌についてセフェム系薬の耐性率を調べたところ、牛22%、豚15%、牛農家29%、豚農家17%という結果であった。牛が高い値を示し、それに従い牛農家も高い値を示したものと思われた。耐性遺伝子を解析したところ、そのほとんどがCTX-M型遺伝子を保有しており、臨床現場と同様の結果を示した。家畜、農家、臨床において耐性菌の水平伝播があるか解析する必要が考えられた。 ②臨床から分離されたカルバペネマーゼ産生菌の解明 海外渡航歴のある患者よりセフェム系薬ならびにカルバペネム系薬に高度耐性を示す大腸菌と肺炎桿菌を臨床より分離した。耐性遺伝子を解析したところ、それぞれNDM-5遺伝子、NDM-1遺伝子を保有していることが判った。NDM-5は日本での初めての検出例であった。NDM-1産生肺炎桿菌はアミノグリコシド系薬に耐性を示すRmtC遺伝子も同時に保有するものであった。いずれもプラスミドを介して耐性遺伝子が広範に拡散される可能性を示したため、国内における伝播が危惧された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
家畜および農家からの検体収集では多くの協力を得ることができ、予定通りに研究を行えることができた。臨床においてもNDM産生菌を新たに分離することができた。これら研究成果については学会や論文にて発表した。
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今後の研究の推進方策 |
検体収集について引き続き行う。家畜検体については糞便ならびに鼻腔拭い液も収集し、分離菌の同定ならびに耐性動向の調査を行う。特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌については、耐性遺伝子(mecA)の遺伝情報を決定する。セフェム系薬耐性菌について、本年度同様に耐性遺伝子の解析を行い、ゲノム情報などと関連性を明らかにする。臨床分離株については、カルバペネマーゼ産生菌を中心にその耐性動向と耐性機構の解明を目指す。その他、研究計画に従い実験を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
検体収集を優先し、分子遺伝学的解析用の試薬を購入していない。
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次年度使用額の使用計画 |
DNAシークエンシングを多く行う予定であるため、試薬の購入を予定している。 所属機関異動のため不足している試薬や機器類の購入、さらに農家への結果報告も予定している。
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