研究課題
本研究では臨床などで蔓延する薬剤耐性菌の出現背景を包括的に解明すべく、臨床ならびに家畜から分離される薬剤耐性菌を対象に解析を行った。さらに臨床現場で問題となっているカルバペネマーゼ産生菌の迅速検出法の開発を行った。①患者、家畜とその農家から分離されるセフェム系薬耐性大腸菌の実態解明患者、家畜(牛・豚)とその農家から分離されたセフェム系薬耐性大腸菌について、遺伝学的背景を解明しその関連性を明らかにした。いずれもCTX-M型 β-ラクタマーゼを産生しており、中でもCTX-M-14遺伝子をコードしているものが多い特徴があった。しかし、これら大腸菌のゲノム型を分類したところ、家畜から分離された本菌は患者からの臨床分離株とは大きく異なる分類とその分布を示していた。さらにCTX-M型 β-ラクタマーゼ遺伝子のコードされているプラスミドの型についても共通性は確認されなかった。臨床分離株と家畜由来株について明確な共通性を確認することができず、お互いの耐性株の授受を認めることができなかった。最終年度には、農家由来株の一部がその家畜と同じ遺伝学的特徴(耐性遺伝子、ゲノム型、プラスミド型)を持つことが確認された。このことから家畜と日頃濃厚接触している農家においては、耐性株を共有することが明らかになった。以上より、患者の保有する耐性菌は家畜から伝播された可能性は低いことが判ったが、農家においては伝播する可能性が示された。②カルバペネマーゼ産生菌検出法の開発臨床現場で特に問題とされているカルバペネマーゼ産生菌について、LAMP法による検出法の開発を行った。本法は米国などで流行しているKPC型 β-ラクタマーゼ遺伝子の検出を迅速に行うことが可能であった。最終年度は、新しい検出法CIM法を用いて本邦の耐性株を検証した。そのほとんどを検出可能であり、臨床検査において有用であることが判った。
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