研究課題
インフルエンザウイルス感染により発症する急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は急速に進行し高い死亡率を呈するが、現在の治療法では完全なコントロールが困難であるため、臨床現場において問題となっている。そこで抗体産生において重要な抗原提示細胞の一つである樹状細胞に着目した。これらの細胞特異的に、低酸素状態やウイルス感染により誘導されるHIF-1αを欠損させたマウスを作製し、インフルエンザウイルス(PR8株)を感染させるとARDS様症状を発症することを発見したため、ウイルス感染における抗原提示細胞でのHIF-1αの役割について解析を行った。HIF-1α欠損マウスにおいてARDS様症状が発症する原因の一つとして、樹状細胞からのIL-6産生が多いことが考えられる。そこで骨髄由来樹状細胞にインフルエンザウイルスを感染させると、HIF-1α欠損マウスより作製した樹状細胞においてIL-6産生が増加することを確認した。IL-6は好中球遊走に関与するサイトカインの一つであるため、感染マウスの肺免疫染色像を比較したところ、HIF-1α欠損マウスにおいて肺への好中球浸潤が亢進していた。多量の好中球が肺に集積することで、ガス交換が障害され、肺が直接損傷を受けたことでARDS様症状が発症したと考えられる。またヒトにARDSを発症させるウイルスである高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1をマウス、及びカニクイザルへ感染させたところ、低病原性のH1N1と比較してT細胞と結合する樹状細胞の数が減少し、抗体産生が低下していた。更にH5N1感染を効果的に防御するワクチニアウイルスをベースとしたワクチンを接種したところ、T細胞と結合する樹状細胞の数が増加していたことから、高病原性インフルエンザウイルス感染によるARDS発症には樹状細胞数低下による液性免疫応答の低下が原因であることを発見し、論文にまとめた。
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Scientific Reports
巻: 6 ページ: -
10.1038/srep37915
http://www.igakuken.or.jp/project/detail/infectious.html